【読書記録】バカと無知 人間、この不都合な生きもの(著者:橘玲)|不都合を知った先になにがあるのか

2025年1月8日

何度か橘玲さんの本を扱って来ていますが、自分が読み始めたのはこの「バカと無知」からです。

初めて読んだときは、ブログ記事にしようとは考えてなかったので。

面白がって読み進めてましたが、なんだかモヤモヤとして終わってました。

ですが、他の橘玲さんの本を数冊読み。

なんとなく主張や話の展開が分かるようになってきたので、今回読み直すことにしました。

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問いかけの本

センセーショナルなタイトルに引かれて買いましたが、1度目のときはこのタイトルの意味がイマイチ掴めてませんでした。

が、どんな本かは著者自身がまえがきで示してくださっています。

本書は、このような「やっかい」な存在であるわたしたちの話だ

まえがき 孤独な男がジョーカーに変貌するとき P.8

何が「やっかい」かはあまり触れないようにしますが。

簡単に書くと、私達が理想としたり良しとしたりするモノやコトと、実際とる行動や環境に矛盾があることを、様々な研究・検証を元に解き明かしてくれています。

なんでそんなことをしてくれるかというと、それがタイトルの「バカと無知」ということなんでしょう。

締めの一文を、二度目の今回は何度も反芻したんですが。

一人でも多くのひとが、本書で述べたような「人間の本性=バカと無知の壁」に気づき、自らの言動に多少の注意を払うようになれば、もうすこし生きやすい社会になるのではないだろうか。自戒の念をこめて記しておきたい。

あとがき 「バカと無知の壁」を乗り越えて P.282

この本で扱われ、議論された内容を知って、「それを知ったあなたはどうする?」と。

問いかけられている本です。

バカと無知について

本だけでなく、章のタイトルにもなっていますが、「バカと無知」についてはこの本の内容の一部でしかありません。

なので、自分が受けた印象としては。

人間が普遍的に良しとして来た社会を元に現代に起きている問題を考察し。

その実現困難性を「バカと無知」の違いで説明し。

各論として社会問題になっている物事の原因について議論されている。

という本です。ざっくりすぎるかもしれませんが。

なので、「バカと無知」の違いについて把握することが読み進めるうえで大切になりますが。

・・・読み進めると忘れてしまうんですよねw

それぐらい、扱われる項目が面白いということです。

話を戻して、「バカと無知」については、ダニング・クルーガー効果の研究結果を元に話が展開されています。

その中で、「知と無知」の三つのパターンがわかりやすかったですね。

一つ目は、「知っていることを知っていること」

二つ目は、「知らないことを知っていること」

三つ目は、「知らないことを知らないこと」

PARTⅡ バカと無知 6「知らないことを知らない」という二重の呪い P.48~49から抜粋

哲学的な感じなので、似たようなことを何処かで聞いた事もあるような気はしましたが。

1つ目は中身や内容まで含めて知っていて、それに基づいて便利に利用している、ということ。

2つ目は中身や内容を知らないけど、存在を知っているから対処しつつ問題なく過ごしている、ということ。

3つ目がダニング・クルーガー効果で、この本でも例になっていますが、「何が分からないのか分からない」という状態、ということです。

新しいことを勉強する時に起こる状態ではありますね。

で、この状態を端的に表したのがこの3つのパターンの前の章にかかれています。

「バカの問題は、自分がバカであることに気づいていないことだ」

自分の能力についての客観的な事実を提示されても、バカはその事実を正しく理解できないので(なぜならバカだから)・・・<中略>・・・ますます自分の能力に自信を持つようになる。

<中略>

ダニング・クルーガー効果では、バカは原理的に自分がバカだと知ることはできない。私も、そしてあなたも。

PARTⅡ バカと無知 5バカは自分がバカであることに気づいていない P.47

何度読んでも、ゾワッとする部分ですがー。

ポイントは認知能力というものです。

まず、「何が分からないのか分からない」という状態は、認知できないか、認知しないと行けないものを理解理解できないという状態とも言えます。

なので、引用した「客観的な事実を提示されても、バカはその事実を正しく理解できない」という部分もそのまま、客観的な事実を認知する能力があるかどうかという話です。

この部分もそうですが、本のここから先は研究結果などの客観的な事実が次々と挙げられるので。

本の最後の「自らの言動に注意を払う」客観的な事実として認識できるか?

という議論なんだろうなと。

正確に認知することができれば、それは3つのパターンの1つ目か2つ目となり、対処方法や利用方法を把握したり考え出すことができることになります。

つまり、現代社会のルールとして機能している、科学性や合理性といったものも含めてどのように仕組みや制度を利用していくか。

これが、中にいるのでわかりにくくはなりますが、自分という人間や所属する共同体で起こる問題に当てはめるのか。

仮説を立てて行動できるかどうか。

ということだと理解しました。

橘玲さんの他の本を数冊読んで、合理的に利用する方が生きやすいでしょ?と言われている気がするので。

その理由を真摯に受け止めるのを助ける本なんでしょうね。

・・・と書いている自分も「バカ」かもしれないので、なんとも言えませんがw

そうかもしれないと思うことで、自分の言動に注意を払うことにつながるので。

これが認知能力のちからという事なんでしょう。

自尊心と記憶

タイトルの「バカと無知」ということの内容を知りたければ、まえがき〜PARTⅡとあとがきを読みこめば十分かんという印象ですが。(かなりカロリー高めに感じる本なので)

人間の「やっかい」な部分として取り上げられている、自尊心と記憶についても書いておきます。

というのも、再認識したという方が正しいでしょうかね。

何事もなく過ごしていると忘れるというか。

どちらかというと、自分は支える立場で働く事が多いのですが。

その立場を活かすために取るようになった言動の理由を忘れていました。

なので、「なんでこんな回りくどい言い方をしてるんだろう?」と思うことがたまにあります。

その理由を思いだした・・・というか、ちゃんと言語かされたような気がしたのが、自尊心の部分です。

どちらかというと、「〇〇の方が良い」という判断をすることが多く、言語化まで深めることはしてなかったもので・・・w

「自尊心は原因ではなく結果」だという当たり前のことが”科学的”に証明された

PARTⅢ やっかいな自尊心 18ほめて伸ばそうとすると落第する P.122

「ピグマリオン効果」の研究結果についてまとめられている部分ですが。

結果にフォーカスしてしまうというのはあると思います。

しかも即効性をもとめるというか。

自尊心の元になるものは自分の中にあるのに、高低で評価する他人によって高まったり低くなったりするので。

なるほど、「やっかい」です。

なので、原因となる部分についてしっかりと考えて動かないとなぁとか。

そんなことを思い返すことができました。

あとは「記憶」ですね。

この本の中では、人間を苦しめる記憶がどの様に形作られるかについて扱われていますが。

単純に、記憶の仕組みの復習になったというか。

色々と勉強を進めている今だから、ハッとさせられたものです。

では、記憶とはなんだろうか。それは原理的には、ニューロン間の「つながりやすさ」と「つながりにくさ」の組み合わせでしかない。脳がなんらかの刺激を受けたとき、つながりやすいニューロンが発火し、つながりにくいニューロンは沈黙する。

<中略>

ニューロンの結合が、「公園」と「木」のような連想を繰り返し強く活性化させると、その場所でカルパインがつくられ、記憶細胞の間の結合をより強くする。

PARTⅤ 全ての記憶は「偽物」である 40人類がトラウマから解放される日 P.261~262

自分は暗記が苦手なので、あんまり覚えるような学習よりも流れを繰り返すような学習が多いのですが。

何かプールのようなものに学習した内容を貯めるわけではなく、記憶細胞のつながりでしかないわけで、結果その繰り返すような学習があっているということですね。

この本の内容ではなく、なにかで見かけたんですが、その中で「間違える」という経験が重要みたいで。

「間違える」ことを正確に認識することで、それが脳にとって危険なこと認識され、憶えやすくなる・・・というようなことを読んだか聞いた事があります。

この本によると、この記憶も怪しいですがw

ただ、この間違えたことを正確に認識するというのが重要で、それに付随する何か別のことを認識してしまうと、間違った努力につながるんだなぁと。

大学受験の時に学力が伸び悩んでいた頃の自分を思い返すと納得でした。

ムカついても、ちゃんと事実として受け入れないといけませんw

どう答えるか?

自尊心と記憶については、楽しい読み物のように書いてしまいましたが。

ここで扱われている話題についても、しっかりと真正面から捉えた方が良いないようです。

今の社会で問題となりやすいことを扱ってるからですね。

今回の2回目によって、ようやく少しスッキリすることができましたが。

問いかけに対する答えを出せるかどうかで、このスッキリ感がまた違うと思います。

もちろん、答えを出さないというのも、選択肢の一つなんですけどね。

ただ、客観的な事実を知ったうえで、少しでも生きやすくなるように活用して欲しいという作者である橘玲さんの想いも感じます。

自分一人の力ではどうしようもできないものについては、合理的に利用して自分のプラスにする方法について、本を書かれている方ですし。(一方的な個人の感想です)

その刃を研ぐように、脳力を鍛えたいなぁと思った次第です。

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