【読書記録】無理ゲー社会(著者:橘玲)|端々の希望を拾えるかどうか

2025年1月8日

ブログで書こうかなと思うことが貯まる2024年の秋です。

そんな悠長に構えているわけにもいかないんですが、本は読み続けてます。

前回の「もっと言ってはいけない」に引き続き、今回は橘玲さんの「無理ゲー社会」です。

「バカと無知」→「ユーチューバーが消滅する未来」と間に数冊挟みながら読み進めまして。

考えた結果、「もっと言ってはいけない」も読もうと本屋に書いに行ったら、一緒に並んでいたので買っちゃいましたw

毎回思うんですが、橘玲さんの本のタイトルはすごいですねぇ。

手にとってしまいますし、ひと目でテーマがわかりますし。

そんな直感で手にした本ですが、かなり考えさせられる内容でした。

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「無理ゲー社会」の構造分解

「もっと言ってはいけない」の読書記録記事では、サブタイトルをつけることができませんでした。

自分自身が内容について何かを述べられるような知見を持っていませんし。

「どう読んだか?」で書く方が書きやすかったのです。

しかし今回は本のタイトル「無理ゲー社会」の通り、社会について扱っています。・・・いや、社会問題について扱われているのは同じなんですけどね。

多くの人に人生が「無理ゲー」だと感じさせている現代社会の構造を解き明かす事を目的とし。

学説や論文に基づき、人間の能力や本能の進化によりどの様な変化がもたらされ。

それが、個人にどの様に影響しているか論じられています。

選択するのは結局「自分」

より、「今の社会を生き抜くには?」ということに焦点が当たっているように感じ、自分が感じた本の印象を言葉にすることができました。

それが、「端々の希望を拾えるかどうか」です。

研究の成果を元に話が進んでいくので、ほぼ事実に近い内容が扱われていると思いますが。

・・・まぁ暗い気持ちにならない方がおかしい内容ですかね。

「そうなんだ!」という発見もあり、分かることで救われるということもありますが、真正面から捉えると卑屈になってしまうような気がします。

なので、学説や論文に基づく検証された証拠を知ったうえで。

「どのような選択を読者はするのか?」

を問われているのではないかと。

というのも、提示される内容をざっくりまとめて考えると、自分ではどうしようもない部分についての事が多いなぁと。

遺伝・進化論・欲求などですね。

生きている限り欲求は生まれますし、誰から生まれてくるかを選ぶことはできません。

誰と誰の遺伝子で生むかは選べても、そこで欲求との衝突が生まれれば、思春期の主張みたいになるわけです。

また、進化など集団としての適応については、個人の力では太刀打ちはできませんし。

気がついたらその流れに飲み込まれてしまい、その末裔としての私達なわけです。

ある意味、その事実を知って良い意味で諦める事が勧められているように感じるのです。

それが端々にある、少し希望を持たせてくれるような一文なんですが。

印象に残っているのは、知能格差社会による分断で、遺伝の影響が強いことが論じられたあとのものです。

人生のあらゆる場面に遺伝の影が伸びていることから、自由意志に制約があることは間違いないとしても、だからといって生まれ落ちた瞬間に全てが決まっているわけではなく、自分の手で運命を(ある程度)切り開いていくことはできるはずだ。

これからの時代に求められているのは、こうした不都合な事実(ファクト)を受け入れたうえで”よりよい社会”を構想する「進化論的リベラル」なのではないだろうか。

PART2 知能格差社会 4.遺伝ガチャで人生は決まるのか? P.119

この後に続く内容で、引用部分が否定されているような気もしなくも無いんですが・・・

となると、この部分を書く必要が無いよなぁと感じるわけです。

ある意味、不安を煽るだけ煽って著者の信奉者を作る、宗教のような流れにする方が本は売れそうな気がしますしw

不都合な事実に腹を立てたり落ち込んだりしても、自分の現実が変わるわけではありません。

それを社会やこれまでの歴史のせいにしても同じです。

なので、自分自身がどのような選択をし、行動していくのか。

その部分を間違えてないようにしようと、言われている気がします。

変えられるのは自分自身で、自由に生きる・自分らしく生きたいと思うのであれば、どうしようもない事にこだわってもしょうがない。

というのは、納得のいく話です。

自己責任の時代になってしまいましたが、落ち込むのも、変えようとするのも、自己責任ということですね。

なので、どうしようもないものへの憧れを捨て「よりよくなる選択はどれか?」という考えと行動を心がけたいものです。

と、本の端々でこのような希望を感じる文章があるのです。

文量としては少ないですが、これを拾って良い気分で読み終わるか、大部分の「ファクト」を拾ってモヤモヤと読み終わるか。

それも、自分の選択です。

自分自身にとっては、少し作者の橘玲さんへの印象が変わった一文でした。

感謝を社会に還元する?

「自分らしく生きる」ヒントをもらった後から、現代資本主義社会の抱える問題について論じられるので。

なかなか高カロリーです。

自分の言葉にまとめさせていただきますが、簡単に流れを書くと。

・資本主義により、人類は遠い未来の夢を現代に実現させる「タイムマシン」を得た
・テクノロジーの発達により、寿命が伸びたりモノが豊かな時代を実現した
・その結果、以前に比べたら想像できないよな幸福な生活を実現
・しかし、超高齢化社会と格差(経済と性愛)の拡大も起きてしまっている
・「より良い世界」のための施策も実施されたり、提案されている
・しかし、それらの施策では解決できそうもない「評判格差社会」も到来した

これに対処しなければならない「無理ゲー」が現在のリベラル化により起きてしまっているとのことです。

きらびやかな世界のなかで、「社会的・経済的に成功し、評判と性愛を獲得する」という困難なゲーム(無理ゲー)を、たった一人で攻略しなければならない。これが「自分らしく生きる」リベラルな社会のルールだ。

あとがき P.284

「自分で運命を切り開く〜」という話はどこに行った?という感じですがw

同じあとがきの1ページ前にこんな一文がありました。

あなたがいまの生活に満足しているとしたら素晴らしいことだが、その幸運は「自分らしく生きる」特権を奪われたひとたちの犠牲のうえに成り立っている。

あとがき P.283

つまり、「自分らしく生きる」ことができている人は、そうできない人たちの犠牲の上に成り立っているということですが。

そのように「自分らしく生きる」ことができない人達を、追い込むような社会環境がすでにあることが続いて論じられていますが。

「自分らしく生きる」ことができている人は、「社会的・経済的に成功し、評判と性愛を獲得する」ことができた人達となります。

これは個人的な印象ですが、そう成れた人達で、自分の状態に満足、もしくは納得している人の目は社会に向くと思うのです。

社会問題へ目を向ける余裕を持つためには、それだけの経済的・精神的な余裕が必要なのではないかと。

実際、そのように見える人たちが取り組み発信しているとも感じています。

となると、一人ではありませんが、「そのような少数の人たちで社会に立ち向かうのは無理があるんじゃないか?」と考えました。

その時に浮かんでしっくり来たのが、「戦国時代」という言葉でした。

歴史が繰り返すのは内容ではなく、構造だと思います。

教科書レベルの知識しかありませんが、戦国時代は名乗りを上げた武将が覇権を競い合っていた時代と言えます。

その中で、自分を正しく評価してもらえるところや、自分の夢を託すことができる主君を探すことが行われていたと考えられます。

つまり、名乗りを上げた武将というのが「自分らしく生きる」ことができている人たちで、その人達の「犠牲」となっている人の中に、正しく評価してもらいたいとか、その主君に夢を託す人がいるわけです。

この名乗りを上げるという行為が、現代のテクノロジーの発達により、誰でもできる状態になっています。仕組まれているとしても。

そんな人たち(個人でもグループでも二次元などのキャラクターでも)に夢を託す行動が、「推し活」なんだろうなと。

自分の気持ちを代弁してくれている人を探し、そのコミュニティに属することで人生の全てではなくても「自分らしく生きる」道を見つけているのではないかと。

そう思いました。

「自分らしく生きる」人たちが作る世界の中で、自分が所属したいと思う人を興味・関心・価値基準で決め、その中で自分ができる協力をすることで「自分らしく生きる」方法を探すのではないかと。

自分の人生や能力の一部だけでも、それを実現する時代と考えると、色々としっくり来ました。

事実を受け入れることで「なんとなく不安」「良くわからないから不安」というものを払拭し。

自分自身が価値を提供したり、価値を提供してもらったりという相互扶助のような状態を形成し。

様々な共同体に所属したり、あるいは作ることで、「自分らしく生きる」ことの喜びを実感し、社会をより良くすることに繋がっていそうだなと。

そのような感謝による社会への還元が、この流れの良い部分としてあるのではないかと思います。

自分を知ること

と、考えてきましたが。自分の事をよく知ることができないと、このような考えには行きつけなさそうだなと。

自分の価値観や判断基準をしっかり持たなければならないので、 この本のPART1で書かれている「自分探しの陳腐化」に立ち向かうことから始める必要がありそうです。

このブログでもいくつか書きましたが、自分探しや自分を見つめ直すような自己啓発本が目につくように感じるのも、この流れなのかもしれません。

本のタイトル「無理ゲー社会」に関連して書くと、ゲームには攻略法があります。

そして、それを扱う攻略本にもスキルを上げて攻略するものやルールや仕組みから攻略する方法を紹介するものなど様々です。

その情報はインターネットにより様々なところで探すことができます。

つまり、無理ゲーと思うものでも、それを攻略したり研究している人がいて、その知見を知ることはできるのです。

その中で何を選ぶかは自分しだいですが、そのために価値観や判断基準を磨くと共に、時には直感に従う判断も必要かもしれません。

冒頭のアンケートを読んでいるときはどうなるかと思いましたが。

思いっきり前向きな内容で締めくくれたので、書きながら驚いている私ですw

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