AIと著作権についてざっくりとまとめてみる
生成AIの普及により、自動でコンテンツを作成することができるようになりました。
そのようにコンテンツ作成で利用していると、気になってくるのが著作権です。
実際に生成AIが出力したコンテンツや著作権についての議論がされてますが。
まだまだこれからという印象も受けます。
なので、他社の権利を侵害せず、AIを安心・安全に利用するにはどうするか?
ということを書いて行こうと思います。
G検定の範囲でもあるので、AI利用の観点から著作権についてまとめていきます。
著作権とは
著作権について詳しく書くとそれだけで数記事必要になるので、ざっくりとした説明とさせていただきますが。
著作権とは「著作物を保護する権利」です。
なので、どんなものが著作物に当てはまるかが大事といえますが。
著作物とは著作権法2条1項1号によると、「思想又は感情を創作的に表現されたもの」とされています。
人間が作ったものすべてに著作権が認められるわけではなく、そこに創作的な表現が必要とされています。
コンピューターの世界だと、プログラムに著作権は認められるが、アルゴリズムやプログラミング言語には認められないというような違いですね。
プログラムはコードを書いた人の創作性を表現していますが、アルゴリズムやプログラミング言語はアイディアであり表現したものではない、というような感じです。
この著作物を作った人には、自動的に著作権者としての立場が付与されます。
著作権は著作物の利用方法により様々な権利が発生するため、その利用方法ごとにどの様な権利が発生するかを知っておく必要がありますが。
ざっくりと、価値を生む行為となる財産権と著作権者の名誉等を守るための人格権に分けられます。
財産権は動かすことができますが、人格権は動かすことができません。
そのため、財産権に関わる利用を希望する場合には、著作権者から許可をもらわなければなりません。
許可なく利用すると、著作権侵害となってしまいます。
ただし、そのような利用をすべて侵害としてしまうと、文化が発展しなくなってしまうため。
利用目的が私的だったり授業だったりする場合は、利用できるようにしているのも著作権法です。
なので、著作権者の権利を保護しつつ、公正な利用による文化の発展のバランスを取るための法律が著作権法です。
AIと著作権の関係
著作権は利用方法により様々な権利が発生すると書きましたが。
AIと著作権の関係について考える時も、どの様な時に著作権が関わってくるかを考える必要があります。
先ほどコンピュータのプログラムと著作権について書きましたが、著作物に該当する場合と該当しない場合があるのはAIについても変わりません。
・AIを開発する時
・AIを利用して出力(生成)すること
・AIが出力したものの扱い
この3点から考えることができます。
AI開発
AIを開発する時に著作権が関係するのは、モデルの学習に使用するデータです。
AIは学習により特徴量を見出すことで、未知の入力に対しての出力を可能にします。
開発者が期待する出力を得るにはできるだけ多くのデータが必要です。
もしその学習データに著作物を利用する場合、それは複製にあたり著作権の侵害となってしまう場合があります。
しかし、それを認めてしまうと、先程書いた著作権の目的である「公正な利用や文化の発展」を達成しにくくなってしまいます。
なので、例外として情報解析に利用する場合には許可不要での利用を認めるという規定があります。
著作権法30条の4
2019年の著作権法改正によってこのように規定されました。
(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合
30条の4では、必要と認められる限度において、続く1項〜3項に例示する場合に著作物を利用することができるというものです。
2項にある「情報解析」がAIの開発に当てはまると解釈されています。
これは日本政府が目指す「AI-Readyな社会」として目指しているものに合致する内容とも言えます。
「AI‐Readyな社会」については、以前の記事で簡単にまとめたので、よろしければ御覧ください。
しかし、それでも許可が必要な場合が2点あります。
1つ目が「享受」することを目的とするかどうかです。
「享受」の意味については、30条の4についての解説の中でこのように定義されています。
「享受」とは、<中略>著作物等の視聴等を通じて、視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ることに向けられた行為
デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方
令和元年10月24日 文化庁著作権課
例えば、私達が映画を見る場合、映像作品や音響演出を楽しむために映画館で代金を払います。
「享受」とはそのように著作物自体から効果を得ることを目的にした行動で、その行動を叶えるために私達は対価を払っています。
その対価を払うことで、著作権者は報酬をもらうことができるのです。
なので、「享受」することを目的にした著作物の利用は、この例外にはなりません。
少し複雑なのが、著作物を利用する人が「享受」目的ではないとしても、他の人へ「享受」の効果が認められる場合も利用には許可が必要となります。
AI開発だとあまり無いかもしれませんが・・・例えば、動画生成AIの学習に使用するデータを選ぶために映画を鑑賞してもらう、という感じです。
また、学習させる時に何らかの理由で映画を等速で流しっぱなしにすることになり、開発チームは単なる学習データとして興味は無いけど、映画の再生機器の操作のために監視する人がいる・・・とかもそうなりそうですね。
あくまで情報解析としてのデータとして、著作物を扱うなら・・・ということです。
2つ目は、使用する著作物のライセンス規定に注意しなければなりません。
これは30条の4但し書きの内容です。
例えば、学習データに使用したいデータベースが著作物として保護されていて、すでに販売されているとすれば。
データベースの著作権者が利益を得ていて、利用には料金を求めていると言えます。
その様な状態で、許可なく学習データとして利用できてしまうと、著作権者の利益を侵害する行為に当たる場合とみなされてしまいます。
ただ、この点については資料を見ても、最終的には司法の判断に、という感じなので。
まだ議論が必要な段階とも言えますが、扱いには注意しましょう。
このように、基本的にはAI開発での学習データに著作物を利用することは原則認められています。
ただし、その著作物の利用方法や利用目的には注意が必要です。
AIの生成(利用)により出力されたもの
AIの学習の結果、モデルの特徴となるパラメータを得ることができます。
学習という過程があるため、モデルによりパラメータに違いはあり、開発者が著作権者に慣れそうですが。
パラメータ自体は単なる計算の結果得られる数値なので、著作物には該当しません。
データと同じ扱いになると言えます。
生成AIを利用して生成したものについては、通常の著作権の扱いが適用され、侵害になるかどうかが問題となります。
・生成したものが他人の著作物と類似性、同一性があるか?
・生成したものが他人の著作物に依拠しているか?
をもとに判断されるということです。
類似性、同一性はそのままの意味ですが、アイデアやありふれた表現という意味は含まず、表現・創作として類似性や同一性があるかです。
依拠性は、模写や二次的な利用が認められるかといえます。画像生成AIの場合は、image2imageで生成した場合依拠性が高くなるかもしれません。
学習データにより類似性や依拠性が認められるようなものが生成された場合、それをアップロードして公表したり販売する場合には、著作権者からの許可がなければ侵害となります。
ただし、私的な利用のために生成する場合には、こちらも通常の著作権と同じく私的利用のための複製として認められています。
AIが生成したモノの著作権
AIが生成したものについての著作権がどこに帰属するかですが。
著作権が認められる著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現されたもの」でした。
AIの生成については、プロンプトなどを入力して生成ボタンを押すと画像や文章が生成されるので、表現されたものとは言えないと考えられています。
そのため、生成したモノについての著作権は無いというのが一般的です。
と言っても、AIモデルを配布しているサイトで生成した画像に使われたプロンプトを見ると。
たまにとても詩的なものがあったりします。
となると、「思想又は感情を創作的に表現されたもの」としてのプロンプトで生成したものだから、プロンプトを入力した人に帰属する!・・・となりそうですが。
あくまで表現してるのはプロンプトで、生成AIが機械的に画像を生成しているだけです。
使用するモデルやシード値などのパラメータを同じにすれば、同じ画像が生成される可能性が高い事を考えると。
プロンプトがプログラムと同じく著作権を認められる可能性はあるとしても、生成したモノに著作権を認められる可能性は低いと思います。
ではどんなモノでも生成して良いかというと、先程書いた著作権侵害の可能性もありますし。
私達の社会は著作権以外にも守らなければならない法律やルールがあります。
それらに反するもの、例えば公序良俗に反するものや専門家でないと扱えないものをAIのみに出力させる、という他の要素も考えなければなりません。
AIを利用するユーザーもそのような決まりを守ることが、AIが広く社会に受け入れられる状態に必要なことだとも思います。
著作権から考えるAIの利活用
以上がAIと著作権の関係についてですが。
生成AIが生成する画像や文章は、人間が作ったものかどうかを見分けるのが難しくなってきています。
そのため、生成AIが与える人間への影響はかなり大きくなっていくとも考えられます。
そうすると、AIが出力したものに問題がある場合が大変です。
ベクトルを含んだ出力をすることで、差別や分断を生むような出力がされたり。
ハルシネーションといった、あたかも本当かのように嘘をつくといったことは、まだまだ残りそうです。
もちろん、AI技術者やサービス提供者の努力により少しずつこうした問題は薄れている気がしますが、全幅の信頼をおけるレベルまではまだ時間がかかると思います。
また、AI倫理という、AIが社会に影響を与えることについて責任を持った行動もとらなければなりません。
しかし、AI技術が進歩し、AIができる範囲が広がって行けば、その分生活はより便利になる実感があるので、期待している人が多いのも事実です。
それと著作権にどんな関係があるかですが。
個人的には、現時点ではAIは普段やっている何かの代替ツールにする方が良いと思っています。
長くなってしまうので、詳しくは別の記事にしようと思いますが。
たとえば、イラストを描く人であれば、構図などのラフ案として生成AIを利用し。
作品としては自分の手で仕上げるといった感じです。
自分はブログを書いている人間なので、ブログのネタや下書きを生成AIに任せ、出力された内容を確認しながら、清書していくという利用方法です。
・・・あ、AIを使ってないので、まとまりのない乱雑な文なんですけどねw
正直、「記事を生成してくれる!」や「画像をそのまま使える!」という紹介をされているAIツールはあまり信用していません。
AI倫理から「AIを使用しています」とか「AIが生成したものです」という一文を入れれば良いという感覚もあるのかもしれませんが、現段階では発信元は自分です。
自分が発信したものや作成したものにどれだけの責任を取れるかというのは、やはり重要だと思うのです。
先に書いた通り、AIにもまだ問題があるため、それをそのまま利用することを進めるのはどうなのかなぁと思うのです。
と言っても、そこまでできるようになったという事実はすごいですし、利用するべきだとも思っています。
なので、AIが抱える問題や与えている影響を理解した上で、どんな利用方法が自分に合っているかを考えるのは大事なことだと思います。
今後も変わっていくでしょう
と、最後は少し熱くなってしまった気がしますが、AIと著作権についてまとめてみました。
細かく書くと長くなってしまうので、少しぼんやりとしてしまった感がありますが。
詳しく知りたい方は本や参考文献を読んだり、AIについて情報発信されている方の動画を見ていただければと。
実際、著作権に関する文献を見てて、「司法の判断〜」という言葉で終わっていたり、曖昧な感じで終わっているものも多いので。
これからも議論が続き、変わっていくものと思われます。
まぁAIがこれからさらに進展していく分野なので、はっきりとしたものが出ないのは現時点ではしょうがないです。
ただ、著作権法の目的や基本的な内容は変わらないと思うので、そこさえ抑えておけば、安心して利用できると思います。
G検定の試験範囲でもあるので、しっかり学ぶこともできます。
AIの開発・研究者、AIを利用したサービスを作り提供する企業や個人、それらを活用して生活を便利にするユーザーなど、今を生きる人全員で理想的な状態が作れるように協力していきたいものですね。
参考
令和5年度 著作権セミナー AIと著作権 令和5年6月文化庁著作権課(PDF)
デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方(著作権法第30条の4,第47条の4及び第47条の5関係) 令和元年10月24日文化庁著作権課(PDF)
参考書籍
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