【読書記録】22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる(著者:成田悠輔) | 2024年現在たぶんもうすでに起きている事
様々なメディアに出演されている、イェール大学助教授で切れ味の鋭いコメントが持ち味の成田悠輔さん(先生?)が書いた本です。
発売当時は読むつもりは無かったんですがー。
メディアでお見かけすることが少なくなり、「成田節が本になるとどうなるんだろう?」と気になって読むことにしました。
内容は社会制度に関するものですが、鋭い言葉の端々の中に成田さんの優しさを感じるようなものでした。
「二人三脚の片足・民主主義が、しかし重症である。」(本文より)
裏書きにも使われている、この言葉の通り。
問題が積み上がっている現代の日本の構造を変える一つの視点として「無意識民主主義」を提案しているのがこの本です。
資本主義により生まれる格差を調整する仕組みであるはずの民主主義が、情報化社会の進展や超高齢化社会の到来により、機能しなくなっている。
ということから、いくつかの解決策が思考されています。
今の民主主義を真正面から捉えるための「闘争」
→老人も若者もそれぞれに問題を抱えているため、自分の問題を解決してくれそうな耳障りの良い政治家を選ぶ。そうではない根本解決を目指す政治家を選ばなければならないが、選挙制度自体に問題があるため、解決は難しそう。今の政治家はその制度で選ばれているしね。
今の民主主義から開放されるための「逃走」
→タックスヘイブン問題などのように、実際に日本から自分や資産を脱出させることで民主主義が抱える問題から逃げる。一部の富裕者層ではこの流れは起きているが、大多数の人が同じ行動を取れるわけではない。
という流れの後に、「無意識民主主義」によって政治や選挙制度自体を作り変える「構想」が提案されています。
これは現在の情報技術を政治に活かすという、これまで人類が失敗してきたことを実現する方法として描かれています。
民意の反映は投票行動ではなく、無意識の行動によって導き出されている。
→自分の意見:現在の脳科学であったり、AI・ディープラーニングの研究で収集できるようになってるし、行動経済学もそういったところがありますよね。
政治家は人気取りかサンドバックの2択しか役割がない。
→自分の意見:揚げ足取りは昔から変わりませんが、今はそれも通り越してるような印象です。本書の中でも「芸人」と例えられていますが、本当にそんな感じ。自分たちの代表として選ぶ人ですよね?
なので、投票行動に民意は反映されないので。政策をアルゴリズムに置き換えて、本来の課題解決に向かうように自動化し。
人気を取るのであれば、政治家よりは皆にあいされるネコで良いじゃないかと。
嫌われ者役は、みんな嫌いなゴキブリで良いじゃないかと。
こちらで実現される社会の方が、今の制度で維持される社会よりもよっぽど民主主義である。
という内容です。
一人一人が諦めないこと
この本を読んだ中で、一番最初に思ったのは「成田さんは優しいな」ということですかね。
過激な論調で紹介されることが多いような気がする成田さんですが、実際はそんなこともないと思っております。
問題点を指摘するだけでなく、自分なりの結論までしっかりと出しているのが、本とインタビューの違いなのかなとは思いましたが。
自分が流し聞きしていただけで、結論まで話してくれてたのかもしれませんけどね。
途中で書いた通りで、内容としてはデータも示されていて納得感はありますし、技術的にも実現できるよなとも思います。
正直、「無意識民主主義」の内容にはワクワクしましたし、この気持ちは変化への原動力になるよなぁと。
今の情報技術の発展は、今までの当たり前が級に覆されることもあるので。
今まで当たり前に思っていたことを疑い、それをどうすれば解決・改善できるか?
ということを考える必要もあると思うのです。
といっても、行動できるかどうかや、人間の気持ちの問題は残るんですが。
一通り読んで、心に残ったのは「おわりに」の一節でした。
どんな小さなものでもいいから、私たち一人ひとりが民主主義と選挙のビジョンやグランドデザインを考え直していくことが大事なのだと思う。
<中略>
歴史を振り返っても、ルソーの『社会契約論』からマルクスの『資本論』まで、結果として最も影響力を持った構想や思想は最も実践が伴っていないものだという経験則がある。
おわりに P.241~242
変えないのも人間の気持ちだけど、変えるのも人間の気持ちです。
この本のテーマは選挙や民主主義といった社会的な内容ですが、身の回りの事に変化を起こすのも同じだと思います。
問題意識を持つ。解決方法を模索する。解決方法を試す・提案する。
ある意味では現代人の教養とも言える内容なのかなと。
それが、自分の人生や他の人の人生を大きく変える可能性もあると。
「この本は素人の妄想」と「C.はじめに言い訳しておきたいこと」で断ってから始めた成田さんですが。
素人とか知識が足りないとかそういうことではなく、自分なりの思想を持って世の中を見るように突かれたような気がします。
政治に興味がなくても
扱われている内容が政治や社会制度についてなので、100%とは言えませんが。
文章自体が読みやすいので、自分のように成田さんに興味があるというだけで読んでも良いと思います。
まぁ今の選挙や政治自体が、良くも悪くもこの本のような状態になってしまっているとも思うので。
興味のきっかけに読んでみるのも良いでしょう。
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