珈琲の世界史(著者:旦部 幸博)|コーヒーの本ではない

本を選ぶ時は、基本興味に基づいて選んでいますが。

なんだかんだで似たような本を選んでしまいます。

まぁ、自分で書いた記事の通りで、無意識の興味に引かれてしまうのでしょうがない。

なので、あえて意識的に選んだのが今回の本「珈琲の世界史」です。

コーヒーが飲まれるようになった経緯や、コーヒーの入れ方の移り変わりについて書かれているのかと思ったんですがー。

良い意味で期待を裏切られた読後となりました。

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「情報が味を深める」ということ

食事をする時に。

高級な物であるとか、その食べ物・飲み物の歴史や素材に関する情報を知ることで、より美味しく感じた経験は無いでしょうか?

本書の著者の旦部さんもこの効果に触れています。

味覚研究の分野ではこれを「情報のおいしさ」と呼び、「おいしさ」の構成要素の一つに上げています。〈中略〉「歴史を知る」ことには、「情報のおいしさ」を通じて、コーヒーの味わいを実際に変化させる力があるのです。

はじめに P.6

トップダウン効果によって、目の前にある一杯のコーヒーに解釈が加わるとともに。

歴史がある=美味しい物であるはず、という期待効果など。

様々な心理が働くんだと思います。

実際、この本を読んだ後。

いつもと変わらない豆と変わらない入れ方をしたコーヒーでも。

ただ飲むのではなく、味をしっかりと感じながら飲むようになった気がします・

いつもより、コーヒーの味を感じるようになったとも言えます。

アフリカで生まれたとされる、「コーヒーノキ」が。

古代より重宝されたり、国家間の取引に利用されたり。

市場や病気に翻弄されたり、地域ごとに独自の発展を遂げたり。

様々な出来事を乗り越えて、私たちの目の前にあります。

世界第3位の消費量を誇る飲み物ですが、それでも今目の前にあるのは当たり前ではない。

このような感覚を、本書で紡がれる歴史をたどると思わずにはいられません。

詳しい内容はぜひ本書をお読みいただければと思いますが。

ただ目の前のコーヒーに感謝するだけではない気持ちが、読書後の私に残ってました。

これは、私たちが当たり前に買ったり利用しているもの全てにも言えるでしょう。

情報にアクセスするということ

本書を書かれた旦部さんは、大学で微生物やがんの研究をされている方だそうです。

学生時代にコーヒーの研究の魅力に取り憑かれ。

「コーヒーの科学」という本を、講談社のブルーバックスシリーズで発刊されたそうです。

その中で、反響が大きかったのが本書で扱われる「コーヒーの歴史」の部分であったと。

なので、歴史だけをあつかった本書を書くことにしたと、経緯について説明されています。

それを可能としたのが、現在当たり前のようにある、インターネットの存在。

コーヒーノキの品種についての植物学的な資料を調べていた時、歴史や地理の知識の重要性に気付かされました。

<中略>

今は非常にありがたいことに、インターネットの普及によって、一昔前なら信じられないの数の文献が⋯⋯それも18世紀のド・サッシーのフランス語文献やユーカスの原初ですら、簡単に入手可能です。<中略>ネット経由で英訳して、他の訳本と照らし合わせて自分でも中身が検証できる時代になりました。

終わりに P.250

集めようと思えば、欲しい情報を比較的簡単に集めることができますし。

外国語で書かれた本でも、あっという間に翻訳することができます。

つまり、情報を得る敷居というのは驚くほど下がっています。

「当たり前だろ」と思われるかもしれませんが。

私が自問したのが、著者の旦部さんのように、能動的に情報を取りに行くような使い方をしているか?ということです。

いまでは望まなくても、自分自身に興味のありそうな情報が自動で選別され、スマホやパソコンといった私達の手元に届くようになりました。

そこから、例えば著者の方とコンタクトを取り、実際に対面で知りたいことを知る、知識を教えてもらう。

このような、情報に価値がある世界において、自分から情報を深める「情報を取りに行く行動を起こしているのか?」という疑問です。

自分が共感できる情報を取り入れ、賛同を示すのも一つですが。

自分で納得感をもった選択ができるように、能動的な情報収集を行い。

知識を深めていくという動きをしたいものです。

「機能」としてのコーヒー

日本でのコーヒーの扱いについて書かれている箇所はあまり多くありません。

が、本書を読めば理解できるものの、驚いたのが「一杯淹て」のコーヒー文化を育んだのは日本だということです。

ヨーロッパのコーヒーハウスやカフェはあくまで人の交流が中心で、コーヒーは(エスプレッソを除けば)できるだけまとめて入れるのが一般的。おいしさの追求は好事家たちが個人で行うものでしたし、アメリカでも「一杯淹て」を売りにする店が増えたのは21世紀に入ってから。おそらく、この当時の日本が初めてだったと言っていいのではないでしょうか?

9章 コーヒーの日本史 P.205

ヨーロッパで起きた市民革命を支えた文化が、引用箇所にある「コーヒーハウス」や「カフェ」であることは、本書内で触れられています。

お酒が出る場ではなく、コーヒーが出る場が選ばれた理由が、コーヒーに含まれている覚醒作用になるのではないかと。

人が集まり議論を交わす時に、頭脳明晰な状態で行うことを可能にする「機能」としての利用が目的で、味は二の次だったということ。

であれば、一度に大量のコーヒーを入れて、ピッチャーからカップに注ぐというのも理解できます。

・・・個人的には、このように淹れて「置いてある」コーヒーを美味しいと感じたことはほぼありません。

淹れたては別ですが。

つまり、情報交換を加速させるためのツールとして、コーヒーが選ばれていたと。

ではなぜ「一杯淹て」のコーヒーが日本で選ばれたのかと言うと。

明確な記載はありませんが、「味」だと思います。

大手チェーン店の展開により、コーヒー業界は過激な競争にさらされた結果。

セルフ式の安価なコーヒーチェーンが増えたことに、個人の喫茶店が差別化戦略として、ドリップコーヒーによる「一杯淹れ」にこだわったと。

経営や業界目線で書かれているので、ここからは私の憶測ではありますが。

日本でコーヒーを提供される場は、情報交換や議論を目的とするよりも、コーヒーを味わうことを目的とする方が、価値を提供できたんだと思います。

つまり、人が集まる理由を日本的なこだわりで再設計した結果、おいしいコーヒーを提供することが指示された。

まぁ、日本でそういうところで話しそうな内容は、飲まず食わずで・・・というイメージもありますからね。

今はだいぶ違うとは思いますが。

コーヒーが地域ごとの発展を遂げた理由も分かりますし。

浸透を測るには、そういった地域性というものを考えるのも大事だと。

そんなマーケティング的なことも考えさせられました。

学べるのは著者の態度からではないか

コーヒーをより美味しく飲む方法のようなものを、のんびりと学ぶつもりで読み始めたわけです。

もちろん、読み物としても面白いです。

特に北アフリカや中近東の歴史にはあまり触れたことがないので、興味深く読み進めました。

・・・横文字の王朝名と人名は、覚えられる気はしませんでしたが。

しかし、私が興味深く思ったのは、著者の旦部さんのコーヒー研究に対する態度から学べることが多かったです。

理系の研究者で、世界史などには触れてこなかった中で。

ここまでの本を書き上げているということです。

途中書いた通り、現代は正解がすぐ手に入る時代です。

インターネットで検索すれば、それっぽいものが手に入りますし。

AIを使えば、複数の情報をまとめて要約した状態にもなります。

情報の信用度を確認するために、ソースの正確性を調査することも求められる中で、どこまでそういった行動を取れているのか。

問いを持つ力や、疑問に執着する力、追求する力というものを、持てているのだろうか。

もちろん、興味や疑問を持ったことの先を知りたいと思えるかは、その対象にもよると思います。

興味さえあれば、情報だけでなく。

情報を提供する人とコンタクトを取るのも、今は様々な方法があるわけです。

このようなことは、勉強や学問に関することだけではなく。

色々なところに広がっている。

そんな学び方について、考えさせられました。

追求する姿勢も大事にしないと

このブログを見ていただいての通り、すこし手を拡げてしまいやすいのが私です。

下手の横好きという感じもしますがー。

一つのことを追求する姿勢を大事にするのも心がけないとなと。

知識を増やすだけではなく、問いも増やしていきたい。

そんなことを思った読後です。

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著者プロフィール
ぽんぞう@勉強中

はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!