発達心理学の基礎理論|心理学検定 A領域(発達・教育)

「発達」というと、どのような印象を受けるでしょうか?

「発達」で調べると、発達障害や学習支援といった、子供の成長に係る内容のサイトが並びます。

なので、幼児や小学生ぐらいまでの成長を思い浮かべるかもしれません。

しかし、心理学では「発生」から「死」に至る過程を扱い。

その中で起こる、人の心身の構造や機能の変化に注目するのが「発達心理学」です。

この記事では、心理学検定の内容に基づいて「発達心理学」の基礎についてまとめていきます。

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発達とは何か?

ヒトの一生を指す言葉が「発達」となりますが、実際にどのような過程を経るのでしょうか?

私達は生まれてから様々な人と関わりを持ち、自分で悩み考え成長し今に至ります。

個性という言葉で表されることも多いですが、成長は人ぞれぞれですし、性格や特徴も異なります。

しかし、親や親族に似通った性格や考え方をしているなど、繋がりも見えます。

そのため、「遺伝(成熟)」か「環境(学習)」かという議論は古くから議論されてきたようですが。

今では2つの相互作用によって発達するという考え方が主流のようですね。

親子の関わりについても、生まれつきのものとして受け止めるものと、周囲からの働きかけによって促すもの。

この2つで構成されている印象なので、納得です。

発達は5つの原理により、法則性を持って進みます。

①分化と統合
一つの動作から別々の動作を取得し、組み合わせて新たな動作を得る過程。

②連続性
身体や精神は変化し続け、段階的に進む。
ハヴィガーストは6段階に分け、それぞれの段階における発達段階の存在を提唱した。

③順序性
発達には一定の順序があり、乱れたり飛躍したり、残存した場合に異常が疑われる。

④方向性
「頭部から脚部へ」「頭部から足部へ」「中心から末端へ」と、発達が進む方向性がある。

⑤異速性
身体や精神の成長速度は一定ではないこと。

自分自身の今までの身体や考えの変化を考えても、この5つの発達原理に思い当たることはあると思います。

初期経験と臨界期

特に生まれてからの関わり方が、その子供の発達に重要であると言われますが。

この初期に得る経験を「初期経験」と言い、この効果が大きく永続的で非可逆的である時期を「臨界期」と言います。

初期経験の重要性を証明したのが、ローレンツがハイイロガンの雛鳥に対して行った「刷り込み実験」です。

孵化後10時間以内に人間や動くおもちゃを見せると、親鳥と勘違いしてしまったそうで。

しかも、その後親鳥を見向きもしなくなるそうです。

10時間以内に親鳥を見分ける時期が、要するに臨界期で。

その期間内にある対象を親鳥だと認識した経験が、初期経験となります。

初期経験や臨界期に関する実験は動物に対して行われ、発達の理解に重要なものとなりました。

アタッチメント(愛着)

この初期経験や臨界期を人間に当てはめたものと言えるのが、ボウルビィの理論です。

乳児が母親などの特定の人物と対人関係を確立する、生後6ヶ月から12ヶ月を臨界期とし。

母親と隔離(マターナル・でプリベーション)された場合に、乳幼児に起こる心身の反応と影響を調べました。

この特定の人に特定の感情を向ける愛情の絆を、「アタッチメント(愛着)」といいます。

このように愛着が形成できない状態だと。

・精神発達の遅滞
・身体的成長の障害
・情緒を欠いた性格障害
・非行
・深刻な悲痛反応

こういったものが起こる可能性があるとして、愛着の形成の大切さを説明し。

特定の養育者が安全基地として作用する、アタッチメント理論を提唱しました。

この理論を元に愛着の質を、ストレンジ・シチュエーション法で計測したのがエインズワースです。

満1歳付近の子供が、母親から離され、再開した時の反応を観察し。

4つの愛着タイプに分類しています。

・回避群
母親との接触接近を避けようとし、愛着を示さない。

・正常群
母親が離れると泣いたり抵抗を示すが、戻って来ると素直に喜ぶ。

・アンビバレント群
母親から離れようとせず、母親が離れると混乱する。戻ってきても母親を責める行動をする不安定な愛着。

・無秩序/無方向群
愛着行動に一貫性がなく、親への恐れなどがある。

私は正常群とアンビバレント群の中間みたいだったかなぁと、自分の子供の頃を振り返ると思います。

単に愛着を形成するだけではなく、その質も重要であることが分かります。

しかし、人間の発達の場合、脳発達や社会性、情緒などが関係するため、臨界期を決めにくいとされていますので。

実験時期などは参考までに、という感じでしょうか。

研究法

基本的には心理学の研究法が、そのまま利用されています。

しかし、愛着理論の研究のように親子に影響のある可能性もあるため、インフォームド・コンセントの実施がより重要であると言えます。

発達の研究については、時代背景や年齢の影響も考慮する必要があります。

・横断的研究法
年齢の異なる対象群に特定の機能や特性の調査・測定を行い、年齢別に並べて比較検討し、発達的変化の大まかな傾向を明らかにする。
短期間で行え、コストも少なく、統計的データを一度で得られる。

・縦断的研究法
同じ対象群を成長と共に数年に渡り、周期的に検査・調査を行う。
特定の個人の経過を捉えることができ、年齢的な変化を直接的に捉えることができる。

この2つのメリットを抑えた、「横断系列的研究法」もあります。

ピアジェの発達理論

ピアジェは「発生的認識論」を提唱し。

認識は、主体が環境と相互作用する中で構成され形成されると考えました。

行動や思考の様式である「シェマ」を、環境との相互作用により、自分に合うように「同化」または対象に合わせる「調節」を行うとします。

「同化」と「調節」のバランスをうまく取る「均衡化」により、新しい「シェマ」を獲得するのが、ピアジェの発達理論の中心概念です。

そして、以下の4つの発達段階を絶対のものとしています。

①感覚運動期(0〜2歳)
原始反射から循環反応による新たな習慣を獲得し、シェマを協応させていきます。
獲得したシェマを適用したり、探索行動を行うことで、目的に応じた手段を探るようになります。
そして、「対象の永続性」という信念も獲得します。

②前操作期(2〜7歳)
自己中心性や、無生物や植物に人間と同じ心があると信じる「アニミズム」が現れる時期です。
象徴活動や記憶などにより、思考する範囲が広がります。
しかし、知覚の影響が大きいため、論理的な解決には至りません。

③具体的操作期(7〜11歳)
「AはBに対応するということは、BはAに対応する」といった相補性の概念を獲得します。
これにより、長さ、量、数、面積、重さといった「保存の概念」を獲得します。
小学校の算数や理科で習う内容ですね。

④形式的操作期(11歳〜)
論理的推論、抽象的推論が可能になり、思考の幅が広がります。

常にこの順序で起こり、一つ前の段階が前提とされていて、密接に関連し合っているとしています。

行動から思考へと発達が流れていくようで、とても興味深いですね。

ヴィゴツキーの発達理論

ヴィゴツキーは発達過程を、社会・文化・歴史的に構成された人間関係や文化的対象を獲得していくと説明する、「社会文化的発達理論」を提唱しました。

ピアジェの発達理論が子供の成長過程を中心としていたのに対し、ヴィゴツキーは子供を取り巻く社会や文化・歴史がどのように発達に影響するかを説いています。

子供の発達水準を「一人でできること」と「手助けがあればできるもの」の2つに区別し。

「手助けがあればできるもの」を徐々に「一人でできること」にする過程が発達であり、大人や養育者の働きかけが必要であるとしています。

この「手助けがあればできるもの」の水準と、「一人でできること」の水準の間の範囲を「発達の最近接領域」と呼んでいます。

子供が抱える様々な課題に対し、大人や養育者が援助したり制御し「足場」作りを行い。

子ども自身が行えるようになったら外していくという、関わり方が大切であるとします。

このような支援は言葉によって行われますが、そのようなコミュニケーションの道具(外言)である言葉が、思考のために使う道具(内言)へと変化していくという概念も提唱しています。

エリクソンの発達理論

人生を8つのステージで捉える「ライフサイクル論」を提唱したのが、エリクソンです。

それぞれのステージで発達課題があり、成功した場合と失敗した場合に起こる事を示しています。

・乳児期(0〜1歳):基本的信頼or不信
安心感を与えられるかどうか。

・幼児前期(1〜3歳):自律性or恥と疑惑
食事やトイレなど、自分から行う行為に成功するかどうか。

・幼児後期(3〜6歳):積極性or罪悪感
友達との関係で、自分が進んで行えるかどうか。

・児童期(6〜12歳):勤勉性or劣等感
勉強の時間が増える中で。
知識やスキルを身に着けられるかどうか。
友達より遅れているかどうか。
目標を達成できるかどうか。

・青年期(12〜18歳):同一性or役割混乱
「自分が何者であり、何をすべきか」を考えるアイデンティティの探求の時期。
先延ばしにすることを「モラトリアム」という。

・成人前期(18〜35歳):親密性or孤独
仕事や結婚などのライフステージにおいて、重要な人々と親密性を築けるかどうか。

・成人後期(35〜64歳):生成継承性or沈滞
子供や後輩などの年下や弟子との関係性の中で生まれる、生成継承性がうまくいくか。
うまく行かない沈滞は中年期危機。

・老年期(65歳〜):自我統合性or絶望
人生を振り返った時に自分自身を受容し満足できるかどうか。

特に、愛着に係る乳児期と、人生に係る青年期は抑えておきたいですね。

また、社会的問題として上げられるものの原因が、この8つの発達課題のどれかに属しているような印象を受けます。

どのように関わるかだけでなく、社会に何が足りていないのかを測る基準にも利用できそうです。

それぞれの視点を当てはめると面白い

発達心理学の基本とその理論について簡単にまとめました。

途中で挟んでしまいましたが、「自分はどうだったか?」を考えながら読むと理解が深まります。

ピアジェは「知性」、ヴィゴツキーは「社会性」、エリクソンは「一生」という視点なので見え方も変わってきます。

また、それぞれの視点を組み合わせると、自分の状態や、自分の子供の状態を観察する指針にもなるでしょう。

・・・あ。

心理学検定の学習に沿ったものなので・・・。

テキストなどで、詳しく確認してくださいね!

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著者プロフィール
ぽんぞう@勉強中

はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!