認知と知覚の基礎:脳は世界をどう切り取るのか?|心理学検定 A領域(学習・認知・知覚)
認知心理学は記憶や思考を扱います。
前回は記憶についてまとめましたが、記憶は思考や知覚によって形成されます。
つまり「心の情報処理の入口」となる脳の機能なのです。
今回は、その思考や知覚について。
心理学検定の内容に基づいて、ざっくりとまとめて行きます。
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「考える」仕組み
「認知」という言葉の意味を調べると、
認知(にんち)とは、人間が自身の五感を通じて外部からの情報を受け取り、それを理解し、意味を付与する過程を指す言葉である。
と、出てきます。
情報を「受け取り」、「考える」ことで認知されるわけです。
選別のための「注意」
受け取る方法は五感の「知覚」に係るものですが、それが自分にとって重要な情報かどうかを選別することが「受け取り」の一歩となります。
これを「注意」といい、特定の情報を優先的に処理し、他の情報を抑制する心的な機能のことです。
わかりやすい研究が「カクテルパーティー効果」と言われるもの。
繁華街の街中や、人の多いショッピングモールなどの騒がしい環境でも、一緒にいる人と会話をするのに特に問題を感じたことはないはずです。
ライブハウスといった騒がしいどころではない場所でも、一緒に行った人と会話をすることはできます。
これが、その人との会話に注意を向け、周囲の音を抑制するからだとされています。
会話だけでなく、視覚などでも重要な情報かどうかを注意によって判別しているのです。
「言語理解」の基本
会話を出したので思考の過程について書く前に、言語理解について書いていきます。
自分の扱える言語で聞き、考え、理解するという、物心ついたときには普通にしていることですが。
まずは文字を覚えます。
最初はもちろん書くことはできませんが・・・アルファベットやひらがなのようなものですね。
音韻や音節を表す「表音文字」と言われるものです。
そして、日本語の場合は、一つの文字が意味を持つ漢字などの「表語文字」も覚えることになりますが。
「単語」によって、言葉と対象を結びつけるようになります。
これらをつなげることでコミュニケーションを取ることができるようになり、つまり文章となります。
文章中の単語を処理し、自分の知識と結びつける復号化を行い。
単語で構成される文を意味のある形で理解する、構文解析を行い。
最後にそれらの文が繋がっている、文章全体の理解へと処理を自動で行っているのです。
ここらへんは、AI研究のTransfomerやAttention機構の仕組みを知ると、理解しやすいかもしれません。
自分はこの仕組みを知ることで、「話していることって、実はすごいことなんだな!」と思いましたがー。
それよりも言語について扱った本を読む方が良いですかね。
このようにして獲得した言語を使って、私たちは「考え」、問題解決を行っていきます。
思考のモデル
認知心理学者で行動経済学社でもあるカーネマンは、思考について「二重過程モデル」を提唱しました。
まずは、知覚に近い自動的なものとしての「システム1」があるとします。
ここでの働きは「ヒューリスティック」と言われるもので、経験則や直感に基づくある程度正解に近い答えを見つけ出すための思考法です。
行動経済学の元となる理論ですね。
そして、その反対に意図的なコントロールによる思考の「システム2」があります。
「考える」という行為はコチラに当てはまり、ここで注意すべきものは「バイアス」です。
この2つのシステムを使い、私たちは物事を考え、問題の解決を目指します。
論理的に考える「批判的思考」
正しく問題の解決を「考える」思考法が「批判的思考(クリティカルシンキング)」です。
意識的によく考えることで、無意識や直感的に起こる思考に働くバイアスを修正します。
しかし、ただ考えるのではなく、目標や文脈に応じて考えることが大切です。
自分のバイアスを自覚し、論理的に妥当かを検証する方法と共に、論理的に考えようとする態度も重要な思考です。
私達が「考える」ことは、何かしらの問題や課題に対するものです。
そのための仕組みが脳の機能として備わっていて。
脳からは無意識・直感的な解決策が提示されます。
それを、論理的に正しい方向に修正することも、同じく脳を使い「考える」ことによってできます。
この過程で、「認知」が形成されるわけですね。
知覚心理学
言葉の意味にもある通り、認知の始まりは「人間の五感」にあります。
人間は五感を使い、外部の情報を取り入れていて、脳が意味のあるものとして切り取ってくれています。
人間の生理的な仕組みについて把握することで、どのように認知へ繋がるかの入口が分かります。
視覚
視覚は私たちが外部の情報を取り入れるのに、一番利用しているものかもしれません。
また、情報の影響を与えるのに効果が強いとされるのも視覚です。
視覚は、光の波長に反応する「視細胞」によって知覚されます。
「桿体(かんたい)」という可視光の全波長の明暗に応答するものと。
「錐体」という特定の波長に反応する2つの細胞によって構成されています。
そして、両目、つまり左右の目にある視神経を通して得た情報が「視覚伝導路」を通り。
途中にある「視交叉」で、左右半分ずつの情報が入れ替わって左右の後頭葉にそれぞれ到達することで、奥行きの知覚が形成されるそうです。
この流れの中で、視覚を通した知覚が形成されていきます。
まずは、明るさと色。
「桿体」と「錐体」の反応によって、明るさや暗さを知覚します。
光の波長には様々な波長があり、それにより色が知覚されます。
・無彩光:色の知覚を生じさせない、全波長を均質に含む光
・有彩光:特定の波長帯を主成分とする光
・単光色:特定の波長のみで構成される光
単光色を合成させていくと、無採光になるそうで。これを、加法混色といいます。
物体の色は反射する波長の成分により知覚されます。
反射しない波長は吸収されていきます。
物体の色の合成を、減法混色と言います。
色で説明するのもあれですがー。
加法混色だと白くなり(透明の方が正しいでしょうか)、減法混色がと黒くなる、というのがわかりやすいでしょう。
美術の授業で習った記憶がありますがー。
三色説なども関係してきます。
物体の形状の知覚はどうかと言うと、こちらには「ゲシュタルト要因」が関わります。
プレグナンツの法則に基づき、複数の要因を一つの図として知覚し、情報のまとまりとして把握するそうです。
しかし、人間の顔の知覚は少し特殊なようですね。
奥行きの知覚も、「輻輳(ふくそう)」と呼ばれる、視線を合わせるための眼球の内転運動や。
水晶体の厚みの調整作用によって行われているそうです。
さらに、運動についての知覚も視覚によって行っています。
実際に動いているものは、垂直、水平、奥行きの3次元での移動を知覚します。
しかし、実際に動いていない対象についても動いているように知覚することがあり、これを「仮現運動」といいます。
自分が乗っている電車は止まっているのに、隣の電車が動いているため、乗っている電車が動いてるように感じる。
こんな経験はないでしょうか?
このように様々な知覚を、視覚は行っているわけですが。
メカニズムの解明の有力な手がかりとなったのが、「錯視」と「視覚の恒常性」であるとされています。
・錯視:刺激の物理的特徴と視知覚の内容が著しく異なる現象
・恒常性:感覚器上の刺激の変化に対し、知覚内容がさほど変化しない認知傾向
運動の知覚における「仮現運動」は、錯視の一種です。
聴覚
視覚は光の周波数を知覚しますが、聴覚は音の周波数を知覚します。
鼓膜➾蝸牛内部で電気信号に変換➾内側膝状体➾大脳半球の側頭葉➾一次聴覚野
というように、音の情報は流れて行きます。
音には、高さ・大きさ・音色の三要素があり、心理的属性とされています。
視覚と同じく周波数によって、知覚される方法が変わってくるわけですが。
視覚に近い仕組みで働いているような印象を受けました。
クロスモーダル知覚
クロスモーダル知覚とは、ある感覚様相の知覚が他の感覚様相の知覚によって影響を受ける現象またはその過程のことです。
ここでは視覚と聴覚を扱ってきていますが、視覚の知覚によって聴覚の知覚に影響がでる現象と言えるでしょう。
笑顔の写真を見ている時に、ホラー映画で流れるようなBGMが流れると、不気味さを感じてしまう。
と言った感じです。
知覚は異なっても、情報が処理されるのは脳内です。
その処理が密接に相互作用することで起こる知覚であるとされ。
バーチャルリアリティ技術の開発にも応用されているそうです。
今はAIの仕組みで学習すると良いかも?
ここまでの内容を学習して、AIの研究に活かされてるんだなぁと思いました。
AIの物体認識や音声認識の仕組みで学べる内容と類似している印象で。
心理学を学び始めたばかりの私でも、先にAIの勉強をしていたこともあり納得しやすいものでした。
言語から、解答をテキストで生成したり、画像で生成するといった異なる出力も、クロスモーダルと言われますしね。
AI研究が人間の研究であることが分かりますし。
人間の脳が高度な情報処理を無意識で行ってくれているからこそ、今の感覚があるんだなと。
そんなことを考えました。
視覚や聴覚の測定
最後に、視覚や聴覚の測定についてです。
視覚刺激の明るさは、私達にとっても身近なもので、「輝度」や「照度」で測定します。
明るさを表す単位でルーメンなどがありますが、これは輝度ですね。
自分が光った時に、どの程度明るいかです。
空間の明るさを測る指標である照度は、ルクスで表示されます。
「聞いたことがある」程度かもしれませんが、照らされた時の明るさです。
色には、赤・青・緑を基準として光の色によって測る「CIE表色系」や。
物体の色を色相・再度・明度によって測る「マンセル表色系」があります。
聴覚で身近なものは、騒音の測定で使われる「dB(デジベル)」でしょうか。
ニュースなどで騒音被害を扱うときに必ず出てきますね。
音の高さは周波数で図ります。
音声解析などの調査で波形が出てきますので、これも身近かもしれません。
最近は動画を作る時に、音声データが波形で表示されますし。
無意識だけど当たり前のことに関する研究
思考や知覚について、簡単にまとめてみました。
私達が無意識の内に処理している仕組みについての研究が、ここで扱う内容といえます。
人間が受け取った情報を処理する仕組みが、様々な分野に応用され。
新しい技術を作り出していることも分かります。
ざっと概要を書くことに徹したので、詳しくは参考書などでご確認ください。
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はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!