学習心理学入門：古典的条件づけ〜行動心理学｜心理学検定　A領域(原理・研究法・歴史)

2025年12月10日

基礎心理学とも言われ、心理学の中でも初期から研究されてきた学習心理学についてまとめていきます。

心理学での「学習」は勉強のことだけではありません。

個別の経験を通し、行動を変容させていく過程を「学習」と読んでいます。

なので、勉強は「学習」に含まれる経験です。

行動の変化を説明する心理学でもあるので、現在でも行動療法として利用される行動心理学についても簡単にまとめていきます。

細かい実験や数式は扱わず、大まかに理解できるように書いていきますので。

お付き合いいただければと思います。

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学習心理学とは

学習心理学は、経験による行動の変化の過程を研究します。

なので、学習とは行動が中心にあることがわかります。

何か行動を起こすことで出来事を経験し、その経験から良いことは増やしたり、悪いことは避けられるように行動を変えていきますからね。

行動は何かに反応して起こしますよね。

なので、その何かを刺激と捉え、刺激に対する反応と。

行動した結果によって変化する行動。

この2つの視点が基本です。

行動と刺激を結びつけるものとして、「条件づけ」の研究が進められていきます。

古典的条件づけ

条件付けの研究で有名なのが、「パブロフの犬」です。

犬が餌を見るとよだれを垂らすという現象に気づいたパブロフが、餌と同時にベルの音を鳴らすことで、ベルの音を聞くだけでよだれを垂らすようになった。

という研究で、この餌と餌に関係のない音という刺激を結びつけ、餌を連想させる学習過程を。

「古典的条件づけ」または「レスポンデント条件付け」と呼びます。

この研究での刺激は、餌とベルの音。反応は、よだれです。

まずは生理現象として、餌を見ると犬はよだれを垂らします。

生理的なよだれの反応を「無条件反応(UR)」といい。

えさによって与えられる、特に何かしらの条件を必要としない刺激を、「無条件刺激(US)」といいます。

そして、ベルの音は餌とは無関係な刺激ですが、無関係なうちは「中性刺激」とされます。

ベルの音がなると餌がもらえるという刺激を、条件づけとして行うことで。

ベルの音を聞くだけで、よだれを垂らすようになり、この反応を「条件反応(CR)」といいます。

「条件反射」の呼び名の方が馴染みがあるかもしれません。

そして、条件付けによって形成されたベルの音=餌と予想させる刺激を、「条件刺激(CS)」といいます。

このUS・CSの提示するタイミングを操作したり。

条件付け後もUSなしにCSのだけを提示すると、CRは徐々に減っていく過程を「消失」といいますが。

「消失」後の条件付けの効用を調べたり。

CSと似た刺激に対して反応が生じる「刺激般化」を発見し、それを見分けるようになる「弁別」の過程なども発見しています。

レスポンデント条件付けは、行動のきっかけとなる刺激を学習する過程を研究で、刺激に対する反応という1つ目の視点によるものです。

私は子供の頃、夕方にチャイムがなったら家に帰ってましたが。

これもレスポンデント条件づけとなるのでしょう。

不安という反応が形成されたきっかけとなる、環境や状況を知ることで。

その不安を取り除くための行動を選択できるという、行動療法で活用されている理論の一つでもあります。

オペラント条件づけ

オペラント条件づけは、もう一つの視点である、行動の結果による行動の変化に注目します。

・・・回りくどいですが、オペラントには「行動」という意味があるので。

「行動条件づけ」となり、行動によって行動が決められる・・・という視点だと捉えると良いでしょう。

オペラント条件づけを最初に示したのは、ソーンダイクで、反応(R)が刺激状況(S)と結合学習で「効果の法則」に従うとしました。

方法は研究対象である猫が、箱から脱出する状態を観察するというもので、脱出という条件がついていました。

それに対し、自発的な行動によるオペラント条件づけを研究したのがスキナーです。

レバーを押すと餌が出るという、「スキナー箱」と作成し、レバーを押すのも押さないのも自由であるというものです。

レバーを押すと餌が出るので、レバーを押す行動が「強化」されます。

餌が出ない、つまり強化されないとしてもレバーを押す反応率を「オペラント水準」といいます。

強化を続けると反応率は徐々に高まり。

強化をやめる(消去)と、一時的に反応率は上昇し、低下していきます。

そして、強化回数が多いほど、消去されにくくなり。

消去経験が多いと、消去されやすくなります。

これは、私達の普段の習慣でも体験したことがあるかもしれません。

勉強を頑張ると点数が伸び。伸び続けることが、学習のモチベーションに繋がることもあります。

しかし、社会人になると定期的な試験のようなものがなくなるので。

学習のモチベーションを維持するのが難しい一つの理由かもしれません。

もっと簡単に、お手伝いをするとお小遣いを貰えるというのも、オペラント条件づけですね。

様々な場面で、体験することができる理論です。

強化・弱化・スケジュール

何かの行動を促す結果になる刺激が「強化」です。

しかし、私達の日常では障害という言葉がある通り、除去したり弱めることで行動が促される刺激もあります。

この2通りの反応を、オペラント条件づけでは、反応と結果の随伴性として2つの型があります。

・提示型：反応すれば、刺激を与える
・除去型：反応すれば、刺激を除去する

与えられる刺激は良いものであってほしいですし、除去される刺激は嫌なものであってほしいです。

なので、刺激も報酬と嫌悪刺激の2通りあります。

この4通りの組み合わせの分類が以下のとおりです。

・提示型強化(正の強化)：反応すれば報酬を与える➾反応が増加する
・提示型弱化(正の弱化)：反応すれば嫌悪刺激を与える➾反応が減少する
・除去型弱化(負の弱化)：反応した時に報酬を除去する➾反応が減少する
・除去型強化(負の強化)：反応した時に嫌悪刺激を除去する➾反応が増加

お手伝いをしたらお小遣いを貰えるのが、正の強化です。

お手伝いの約束をしたのに、すっぽかしたから叱るのは、正の弱化です。

お手伝いをしたのに、お小遣いがもらえなかったら、次もお手伝いをしたいとは思わないかもしれません。これが負の弱化。

負の強化は回避学習と逃避学習の2パターンあり。

すっぽかして叱られたあと、ちゃんと約束を守ってお手伝いをしたから、叱られなかった。これは回避学習に当たるでしょう。

そして、皿洗いのお手伝いをしたらお皿を割っちゃったから、風呂掃除のお手伝いに変えてもらう。逃避学習はこんな感じでしょうか。

この分類を元に、心理学者達は反応の結果の刺激とそれに伴う行動の研究を行ってきました。

単純に強化・弱化として考えるのではなく。

環境や状況も踏まえ、強化と弱化によって反応が増えるか減るかを見てきたわけです。

そして、常に強化される状態を「連続強化」、時々強化される状態を「部分強化」といいますが。

お手伝いが毎回必要ではないように、部分強化の方が多いものです。

スキナーはこの強化のタイミングを「強化スケジュール」と呼び。

部分強化スケジュールが示す特有の累積記録があります。

このように、強化のタイミングや量によって行動の変化、つまり学習の効果が変わってきます。

日常生活の様々な場面に現れるものなので、どの強化スケジュールに当たるかを考えると面白いです。

弁別学習

弁別とは、簡単に言えば判断材料になるものです。

判断材料となる刺激により、行動を変えるというものですね。

テキストでは信号の例が説明されていますが。

青信号という弁別刺激➾横断歩道を渡るという反応➾安全に渡れるという行動の強化

赤信号という弁別刺激➾横断報道を渡る反応をしない➾渡るという行動が強化されない

・・・ということのようです。

結果、人は信号の色で反応し行動を制御するということです。

このような学習を、自分自身で正しい行動を選択することで学習したり、他の人を見本にして学習するということを繰り返しています。

行動療法

これまでに書いてきたような経験により学習されたものが、患者の症状や不適応行動に現れるとし。

学習理論に基づき、不適切な行動を変容・除去し、適応行動を形成する療法です。

行動主義の創始者であるワトソンは、恐怖感情を恐怖条件づけによって獲得された条件反応であり、消去や模倣学習により除去できることを示し。

ウォルピはこれを発展させ、「系統的脱感作法」を考案しました。

①恐怖発生のきっかけとなった刺激を、低いもの順に並べた「不安階層表」を作成する
②漸次的筋弛緩訓練を行いリラックスさせる
③不安階層表の弱いものから順に恐怖刺激をイメージさせる
④恐怖を感じなくなったら、次の刺激をイメージさせる

恐怖や不安を感じるものを、リラックスした状態でイメージすることで、段階的に刺激を克服していきます。

他にも、長い時間恐怖刺激にさらすことで、恐怖ではないと感じさせるフラッディングや。

オペラント条件づけの提示型強化を応用した、トークンエコノミー。

観察学習を応用して、望ましい行動を模倣するモデリングなどもあります。

このように、行動にフォーカスし、学習の過程で得た物を変更させるために。

学習心理学の理論を行動心理学が応用し、生活に活かされているといえます。

不安や恐怖といった感情を取り上げましたが。

ノウハウの説明やマインドの作り方が取り上げられる場合で、実際に行動に移す場合。

この学習の過程を応用した行動変容が促されているという印象です。

行動は「仕組み」で変わる

学習心理学は、刺激と反応を見る「古典的条件づけ」から始まり。

反応である行動と結果を見る「オペラント条件づけ」へと発展し。

それらを応用し、行動療法とった心理療法に繋がっていきました。

行動はあくまで結果であって、その行動、つまり反応に選ぶ経緯となった環境や条件も考慮しなければ、どのような「学習」をしなければならないかは分からない。

ということが学べました。

ただ、反応として選ぶ行動には個人差があります。

それに係るのが、環境や条件、物事の捉え方である「認知」です。

次の記事では「認知心理学」についてまとめていきます。