心理学はなぜ科学なのか?研究法の基本を理解する|心理学検定 A領域(原理・研究法・歴史)

メンタルヘルスや心の問題について学習を進めていると、心理学の理論や研究で実証された内容について学ぶことになります。

しかし、対象である「心」は抽象的なものです。

心を科学的に扱う方法について学ぶことは、心理学で提唱される考えを有効なものとして理解する根拠となるものです。

どのように心理現象を観察・測定し、仮説の検証や反証可能性を探り実証していくのか。

研究法の基本を、心理学検定の公式テキストをもとにまとめていきます。

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精神科学であり自然科学でもある心理学

心理学は心や意識を研究する学問です。

まずは、時代や社会的な背景による変化など精神科学的な側面を持ちます。

個人の性格や状態を研究することで、記述的概念を理解し。

それらの事象に共通する概念から、仮説を導き実証する帰納的研究法が可能です。

そして、心理学の理論の効果を提示する時に、「〇〇のような効果が◯%あった」といった説明がつくように。

客観的なデータなどから法則や理論を導き出す自然科学的な側面も持ちます。

論拠に基づき因果関係を明らかにして、一般的な法則を見出しますが。

すでに確かめられた理論から、新しい仮説をたて検証する仮説演繹法を基本としています。

哲学のようなイメージが強くありましたが。

言われてみれば、WEBマーケティングの裏付け理論として「〜という心理学的な効果が〜」という場合。

明確な根拠が示されていて、科学的な方法論が使われていることに気が付きました。

難しく考えるだけでなく、どのように科学的に問題を捉えるかも心理学を学ぶうえで大切ですね。

概念の操作化と変数の定義

科学的な方法で抽象的な心を研究・検証するにはどうすれば良いでしょうか?

対象となる心や意識の動きの原因となる、「ストレス」や「幸福感」といったものも抽象的です。

そのため、客観的に測るため具体的な測定値に落とし込みます。

アンケートのスコアや、脳波の測定などです。

測定できるように定義することで、変数を定義することができるようになります。

因果関係をはっきりさせる実験的研究で用いられる変数は4種類。

・独立変数(説明変数):実験者が操作する変数
・従属変数(目的変数):操作の結果として測定する変数
・媒介変数(仲介変数):独立変数と従属変数の間の因果関係を媒介すると考えられる変数
・剰余変数(交絡変数・干渉変数):独立変数と無関係に影響を与える変数

変数を操作せず、観察し分析することで相関関係を検証する相関的研究では。

・測定変数:測定によって得られたデータ
・潜在変数:相関的研究において変数となり得るもの

という2つの変数を利用します。

変数はどういった方法で研究を行うかで用いるものが変わりますが。

私にとって身近なのは、相関的研究でしょうか。

市場調査や競合調査などで自社との相関関係を考えますし。

回帰分析や重回帰分析という言葉もよく目にする論拠です。

仮説検証という意味では、実験的研究で考える因果関係も身近ではありますがー。

変数として意識的に考えたことはあまりないような気もします。

しかし、どちらも基準となる変数を明確にすることで、誰もが納得できる結果を示すことができます。

抽象的な対象であるからこそ、どのデータを変数として定義するかが重要なのでしょう。

信頼性と妥当性

データの変数を定義したとしても、測定方法や取得方法に疑問が残ると。

その研究結果に疑いを持ってしまいます。

そのため、測定において求められる条件として、信頼性と妥当性があります。

・信頼性
➾データを得る際の安定性
➾複数の項目感のデータの内的整合性

内的整合性とは、その尺度を構成する複数の項目が相互に一貫している程度のことです。

測定が行われた時期や場所、実施した人にかかわらず、一貫して安定したデータは「信頼性の高いデータ」として評価されます。

・妥当性
➾得られたデータが、研究が求めるものとして、どの程度ふさわしいか

測定する対象が、研究の目的にあっているかどうかを調べるのが、妥当性です。

何を測定しているのかを測る「内容的妥当性」。

その測定したものが、研究に当たって意図した変数を適切に測定しているかを測る「構成概念的妥当性」。

ある測定が、関連する他の基準による測定の結果と、どの程度対応しているかを測る「基準関連妥当性」などがあります。

学問なので少し難しく説明されていますが。

要するにその研究結果や測定したデータを、「信じられるかどうか」という問題です。

人によってバラバラなデータであれば、正しく測定されたデータであると信じて使うことはないでしょう。

また、研究に関係のないデータを提示されても、そこで示される結論を信じることはできません。

心理学にかかわらず重要な要素ですね。

研究法

実際にデータを得る方法をいくつか見ていきます。

それぞれに特徴があるので、使い分けることが大切です。

実験法

仮説を検証し、因果関係を調べるアプローチです。

そのため、独立変数を操作して従属変数を測定し観察します。

演繹的研究法として実施されます。

調査法

アンケートなどでデータの量を短時間で集めることができます。

質問項目や実施方法によって、回答の内容に影響があることに注意が必要です。

観察法

対象を注意深く観察することで、その行動を理解しようとする方法です。

実験法の測定方法として用いられます。

条件を設定し、観察の対象や方法を絞り込むことによって、データを測定します。

検査法

心理学的検査を用いて、特性や状態を測定する方法です。

知能検査や学力検査はこの方法に当てはまります。

また、特性や性格などパーソナリティに関する検査も行われます。

研究方法によって、測定する変数が変わります。

面接法

被験者の主観や意味付けと言った、定性的データを得るための方法です。

回答内容以外にも、態度や表情といったデータも得ることができます。

面接者と被験者でラポールを形成できるため、臨床の場でも用いられる方法で、心理的障害を確定させる目的も果たせます。

心理学研究の倫理

心理学も学問なので、研究成果の公表について求められる倫理は他分野とも共通します。

研究不要の代表格である、FFP(fabrication:捏造、falsification:改ざん、plagiarism:盗用)は行わないようにしなければなりません。

また、発表の段階でも、出版バイアスやHARKingといった行動は控えるものとされています。

それ以外に、人間の心を扱うため、被験者も人間である場合があります。

この心理学の特殊性から求められる倫理もあります。

人間の誰にでも認められている、基本的人権を尊重しなければなりません。

・事前に情報を開示し、研究に参加してもらうためのインフォームド・コンセントの実施
・十分な説明ができなかったり、研究法として事前説明ができない場合は、デブリーフィング(事後の報告)の実施。

また、個人情報を扱うこともあるため、研究者を始めとする研究に携わる人全員は、守秘義務を守る必要があります。

どんなに有益であったとしても、方法論・信頼性・妥当性を確認しながら、主張や研究結果を受け止める姿勢が大切です。

心理学を学び始めて

必要な時に有効な情報源として心理学と関わってきましたが。

心理学を学問として成り立たせている背景や、その方法論について学ぶことができました。

この記事ではざっくりと内容を把握するものにとどめたので、心理学検定の公式テキストの一つである「基本キーワード」や、心理学の教科書などで学んでいただければと思います。

やはり、専門用語の理解や関連を知ることが欠かせないので。

理解しつつ、進めていかないとなと思いました。

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著者プロフィール
ぽんぞう@勉強中

はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!