日本円ステーブルコイン「JPYC」はWeb3の普及に繋がるか
大阪国際万博が終了して少し立つ頃に書いています。
個人的には、万博で使われたウォレットが気になっていて、会場に行きたかったんですがー。
予定(と予算)がつかず。
自分のウォレットを持っているとはいえ、WEB3を気軽に体感できるのでは?と楽しみにしてたので残念。
その後、ステーブルコインJPYCが発行され、万博のウォレットが対応できるとの報道をみて。
正直、お金のように使えて投資のような扱いをされているFTにはあんまり興味がなかったんですが。
JPYCの内容をみて興味が湧いたのでまとめてみることにしました。
この新しい「決済方法」をどう捉えるか。
そんな感じです。
JPYCとは?
JPYCとはJPYC株式会社が発行する、日本円と連動するステーブルコインです。
なので、1JPYC=1円の価値があります。
暗号資産は価格の変動リスクが大きく、扱いづらいイメージがあるかもしれませんが。
価値の裏付け資産が日本円の預貯金や日本国債を元にしているので、日本円と同じ価値で使う事ができます。
つまり、日本円をJPYCに交換し、ネットワーク上の決済手段として使うという他の決済手段と同じ感覚で使えることになります。
驚いたというか、意外というか、なるほどと思ったのが。
JPYCは暗号資産ではなく、改正資金決済法に基づく「電子決済手段」として登録されていることです。
暗号資産の利用や導入の最大の障壁は税制です。
日本政府や業界団体の努力により徐々に緩和されている印象ですが、利用についてのハードルはまだ高いという印象です。
「電子決済手段」としての登録なので、暗号資産の期末評価はいらず、日本円に戻すことも法的に補償されているためこれらの壁がほぼ無いといえます。
個人で保有しても暗号資産に関する確定申告は不要ということですね。
また、JPYC株式会社は金融庁から第二種資金移動業者として登録されていて、暗号資産を預かることには対応していません。
Web3の分散化の理念に、自分の資産は自分の手元にあるというものがあり。
それに従った運用であると捉えることができます。
また、「電子決済手段」とは言っても、ERC-20に沿って発行されるブロックチェーン上のコインなので。
Web3ネットワークである、Ethereum、Polygon、Avalanche上での取引にも利用できます。
暗号資産間の移動やWeb3サービスの利用にも便利なコインがJPYCですね。
ここらへんの情報をみて、「JPYC良いじゃない!」と思ったのが私です。
参考:2025年改正資金決済法の概要と実務対応‐BUSSINESS LAWYERS
しかしJPYCはこれからが重要だ
暗号資産の利用でまず上げられるのが、銀行送金(特に国際取引)の手数料の削減と即時決済というものです。
ブロックチェーン・ネットワークにより、信頼性や安全性が確保された状態で24時間取引できるんですが。
この性格は、ブロックチェーン上のスマートコントラクトで発行されるJPYCにもそのまま当てはまります。
しかし、ブロックチェーン・ネットワークを維持する手数料である、「ガス代」が必要なのは他の暗号資産と変わりません。
そのため、JPYCを本格利用するには、「ガス代」に対する理解が必要です。
現状では取引に利用するブロックチェーンの暗号資産(例えば、イーサリアムならETH)をある程度保有する必要があります。
ただ、ここらへんはJPYC株式会社を始め、「ガス代」を意識することなく利用でき方法の調査・検討が進んでいるようなので。
これが解消されると、一気に利用が広がる気もします。
他にもある程度Web3技術に関する知識や理解が必要ですが、「ウォレット」は万博のお陰である程度は広まったかなと。技術的な理解は別として。
そのため、発行主体であるJPYC株式会社も、発行時点でのターゲット層はWeb3の知識に明るい層としています。
徐々に一般層への利用を普及していく戦略ですね。
これらの理解だけでなく、使用に対する理解も難しくなっています。
現状の内容で考えると、決済手段として利用することになりますが。
対応店舗がまだまだ限定的です。
また、通常の日本円代わりの利用となるので、すでにあるPayPayやクレジットカードで良いのでは?
となります。
私もJPYCの仕組みに感動しつつも、「でも今使ってるので良いか」と落ち着きました。
データベースとしてのブロックチェーンを学んでいた時に、感じたのと同じことだったのでー。
Web3の難しさはやはり「利用方法」にあるなと。
改めて考えさせられました。
JPYC株式会社のCEO・岡部さんも「JPYCを使ったサービス」の重要性を伝えています。
ERC-20トークンが一つの突破口?
JPYCはERC-20規格に従って発行されています。
ERC-20はイーサリアムのトークンの発行に関する規格で、現存する暗号資産のほとんどが採用しています。
つまり、トークンを管理するウォレットもほとんどこの規格で発行されたトークンに対応していると言えます。
で。
例えばECサイトを運営する企業が、ERC-20規格を利用してブロックチェーン上にポイントを発行したとします。
通常だとポイントは日本円と同じ価格(1ポイント=1円)のような形で利用できると思います。
この利用について考えた場合、同じERC-20トークンで発行することで、1ポイントを1JPYCにユーザーの意向で交換できることになります。
ポイントに資産価値をもたせることになるので、法律や規制をちゃんと確認しなければなりませんが。
実現可能だとすると、これはそのままECサイトを利用する意味合いに変わってくるでしょう。
ブロックチェーン上で交換することになるので、送金と同じく24時間即時にできます。
既存の電子決済サービスと比べると、現状では便利さで勝つことは難しいというのが私の感想です。
それ以外の価値をどのように負荷するかというのが、今後のJPYCやWeb3のサービス開発に求められると思います。
もともと、Web3は「価値のインターネット」と言われていて、今まで価値を認められていなかったものに価値をもたせることができることに意味があります。
価値があるとわかりやすいものが、ある意味ではお金です。
JPYCは法的に裏付けられた価値を持つ、信用性の高い「電子決済手段」です。
これと連動させることができるERC-20トークンをポイントとして利用する方向性は、その発行元自体が経済圏を作り出すことに繋がります。
Web3の文脈でいうエコシステムの構築を、日本円と連動させる形で行えるのはかなり大きいことなだなと思います。
単なる販促手段から、新たな価値創出のための仕組み作りへと、考え方を変えることもできます。
AIエージェントが普及して、エージェント同士の自動的な価値交換での利用にも、デジタル通貨は相性が良いのでその方向性もありますね。
1JPYC=1円という価値が実現されたことで、様々なことが考えられるようになったなと。
そんなことを思うとともに、決済だけではないWeb3の使い方の入口を開く効果がステーブルコインにはあるんだなと。
そんなことも思いました。
これらは技術を感じさせてはならない
JPYC株式会社の良いなと思ったところは、ターゲットを現状のWeb3ユーザーに絞って提供を開始しているところです。
ここまで書いてきた通り、メリットを感じるにはWeb3の技術の理解がある程度必要です。
しかし、一般の普及を目指すなら、そのようなことを求めることはできません。
今ではなくてはならないスマホの仕組みや通信について、理解しながら使っている一般の人は少ないと思います。
そういった意味で、「ガス代」の概念の理解は難しいと思いますし。
そもそも暗号資産に対する「怪しい」というイメージは払拭しきれて無いとも思います。
ここらへんを一つ超えるものが、冒頭で書いた大阪万博で使われたウォレットにあると、私は考えています。
イベント用とはいえ、多くの一般ユーザーが利用したのは事実です。
そのウォレットの後継となる「HashPort ウォレット」に、JPYCを入れることができます。
開発を行うHashPortは、ガスレス化を目指してもいます。
今後はJPYCを利用した取引「だけに」集中することができるかもしれません。
このような状態を実現することで、Web3社会への意向が実現されるのでしょう。
参考:EXPOウォレット後継「HashPort Wallet」、JPYC対応で本日誕生‐CoinDesk JAPAN
新たな形をどう創造するか
この記事を書いている時点で、JPYCの発行量は1億を突破しています。
不況であったり、先進各国から遅れを取っているとしても、日本円の信用性は変わらず高いままというのが世界の評価でもあります。
その日本円を裏付け資産とするステーブルコインのJPYCに需要が集まるのも、当然かもしれません。
こういった新しい技術の登場で、私たちは身の回りにある当然のものに、気づいていない価値を見出す機会ともなります。
主要なステーブルコインで米ドル連動型のUSDCやUSDTとも形が違うJPYCの登場で、日本のWeb3の環境は新たなステージに入ったのかもしれません。
この形をどう活用するのか、活用方法をどう創造するのか。
日本のステーブルコインの状況で言えば、新たにメガバンクが共同で開発することも決まっています。
AIも含め、なかなか悩ましくも楽しい状態が続きそうですね。
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