治療と仕事の両立|メンタルヘルス・マネジメント検定試験Ⅱ種(ラインケアコース)
前回「三次予防ー医療機関との連携」についてまとめました。
どちらかと言うと、メンタルヘルス不調が起きた直後の対策といえます。
メンタルヘルス・マネジメント検定試験Ⅱ種(ラインケアコース)の最後に当たる第7章では、メンタルヘルス不調による休職を経て、職場復帰する時のサポート体制について扱われています。
メンタルヘルス不調だけではなく、健康に何らかの問題を抱えつつも働きたい方をサポートする方法でもあります。
労働者の高齢化が進む中で、「治療と仕事の両立」の重要性は個人にも企業にも当てはまるものです。
そして、企業のサポート無くしては達成できません。
今回も、メンタルヘルス・マネジメント検定試験Ⅱ種(ラインケアコース)の公式テキストに準拠してまとめていきます。
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職場復帰支援の流れ
前回の記事で、労働者の状態によって、主治医が入院治療が必要であると判断することを書きました。
そうなると、労働者は休職せざるを得ません。
入院の必要はなくても、自宅療養などで同じ状態になることもあります。
その場合、労働者は病気自体に対する不安を持つとともに、職場に復帰できるかどうかという不安も持つことに。
そのため、上司に当たる管理監督者からの職場復帰を目指した支援は重要です。
職場復帰支援は管理監督者だけでなく、職場や組織が一丸となって取り組むものでもあります。
なので、休職する労働者本人はもちろん、人に優しい職場風土を形作ることにつながり。
働く人に安心感を与え、職場に対してより協力的な姿勢を取ってくれるようになります。
そのため、事業所や組織の実態に沿う形で、職場復帰支援のプログラムやルールを用意していくことが大切です。
プログラムやルールを策定する際、参考にできるものとして。
厚生労働省が提示する「職場復帰支援の手引」があります。
この中で示されている「5つのステップ」に沿ったものを、まとめたり再構成しながら実施していきます。
第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア
職場復帰支援のスタートは、復職するときではなく、休職を決定するときからです。
先程書いた通り、労働者は休職にあったての不安を抱えています。
休職期間中に治療に専念できるように取り決めをしておきます。
第1ステップは、労働者からの主治医の診断書の提出から始まります。
その内容を人事労務管理スタッフや産業保健スタッフと共有します。
特に産業保健スタッフは、休職する労働者をフォローしていた場合もあるため、休業中も連携しやすくなります。
そのうえで休業が必要かどうかを判断しますが、この時に主治医の意見も聴き、労働者の状態を適切に把握しましょう。
休業を決定した場合には、以下のことを伝えます。
・職場の状況や職場復帰支援の仕組み
・傷病手当金などの情報提供
・休業開始後の連携方法
・主治医との連絡方法
休職中に職場としてどのようなフォローができるかを取り決めることで、休職する労働者に不安感を多少なりとも和らげられます。
また、求職者の責任感が強い場合には、休職により職場に迷惑をかけると考え。
辞職や役職の自体を申し出る場合もありますが、これらの判断は健康状態が回復してからでも良いことを伝えることも大切です。
正常な状態での判断とは言えないので、答えを急ぐ必要はありません。
第2ステップ:主治医による職場復帰の判断
治療が進み健康状態が回復に向かい。
職場復帰可能であると主治医が判断するとともに、求職者にも復職の希望がある場合。
職場復帰の可否の判断と支援プラン作成のために、面接日を設定し。
復職診断書を事業所に提出するように求めます。
復職診断書には、就業上配慮すべきことを主治医に記載してもらうように復職希望者に伝えましょう。
プライバシーに配慮し、労働者の同意がある場合は、会社の用意した書式の利用もできます。
第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
主治医から提出される診断書は、病状を元にした評価のもとに作成されます。
職場環境のことは考慮されていないため、事業所側での評価も含めなければ、適切な職場復帰につなげることができません。
労働者本人、管理監督者、人事労務管理スタッフ、産業保健スタッフが連携し、総合的に職場復帰が可能かを判断します。
まずは産業医など産業保健スタッフが、安全配慮義務を守るために必要な情報を中心に主治医から情報を収集します。
また、労働者が業務を行えるまでに回復しているかを判断するために。
・ひとりで安全に通勤できるか
・必要な勤務時間を過ごせる程度に精神的、身体的に回復しているか
・規則正しい生活リズムを遅れているか
といったことを確認します。
確認が難しいことではあるので、労働者の家族からの情報提供による協力を得たり、外部機関等が提供するリワークプログラムへの参加を進めることも有効です。
そのうえで、職場が復帰支援を整えるための準備期間を検討し、職場復帰の可否を判断します。
そして、職場復帰プランを作成し、業務上の配慮や人事労務管理の対応を決め。
管理監督者など関係者の役割を明確にします。
第4ステップ:最終的な職場復帰の判断
検討を重ね、ここまで内容を文章にまとめるとともに、産業医の意見書も作成します。
労働者の状態を確認し、まとめられた文章や意見書を元に、事業主が最終的な職場復帰を決定します。
そして、就業上の配慮について主治医に伝え、職場と医療機関が連携を取れるようにします。
第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ
職場復帰後は管理監督者の元で、業務を行うことになります。
そのため、管理監督者は復帰した部下を見守り、症状の再発・再燃、新しい問題が発生していないかを注意深く見守りましょう。
それとともに、勤務や業務の遂行に問題がないかも管理します。
職場としては、労働者の治療状況を確認しつつ。
復帰支援プランの実施状況を確認するとともに、適時見直し。
必要に応じて職場環境の改善に取り組みます。
また、そのような労働者と共に働く管理監督者や同僚のフォローも、職場復帰を成功に導くために重要です。
それぞれの役割を果たす
職場復帰支援の5つのステップは以上ですが、多くの人が関わることになります。
休職者は治療に専念し、職場への情報提供や復職に対する明確な意思表示をすることが大切です。
主治医は求職者を見守り、治療しながら働ける状態かどうかを判断し、職場に労働者を通して伝えます。
産業医や産業保健スタッフは様々な情報を考慮したうえで、復職の判断や支援プランの作成において中心的な役割を果たします。
そして、組織から見た場合の中心に位置するのが、管理監督者です。
復職の判断材料となる職場環境に関する情報提供や、復帰した労働者を主にフォローする立場だからです。
それぞれがそれぞれの役割を果たすことが大切です。
労働者のサポートのために
復職後は、管理監督者が適宜声掛けを行い、復職した労働者が安心して働けるように、十分なコミュニケーションを取りましょう。
以前のように仕事ができないなど、悩みを抱えている場合には、しっかりと部下の声に耳を傾けます。
その時に、これまでの仕事や現在の問題点を整理することで、部下がキャリアデザインや健康管理のあり方を見直すきっかけとなり。
症状の再発防止に繋がるだけでなく、今後の人生を豊かにすることへ繋がるかもしれません。
必要なスタッフを配置できない中小事業所の場合は、外部機関のサポートを受けて実行しましょう。
その際に利用したいのが、5つのステップ内でも取り上げた「リワークプログラム」です。
医療機関が職場復帰を目的として、認知行動療法、作業療法、リハビリテーションなどを実施するプログラムです。
治療を続けながら働くのに必要な、
・症状自己管理
・自己洞察
・コミュニケーション
・集中力
・モチベーション
・感情表現
・リラクセーション
・基礎体力
といったものの獲得を、個人や集団のプログラムにより獲得を目指します。
勤務時間という視点で見ると、リワークプログラム参加者の方が予後が良好とのことです。
治療と仕事の両立
メンタルヘルス不調に限らず、病気を抱えながらも働く意欲と能力のある労働者が。
・仕事を理由として治療機会を逃すことがない
・治療のために職業生活が妨げられることがない
という状態が、治療と仕事の両立です。
医療の進化により、治療を受けながら働き続けることは現実的なものとなっています。
そして、労働安全衛生法で規定はされていませんが、健康確保対策の一環として取り組むべきものとされています。
この取り組みにより実現される職場の働きやすさにより。
・労働者の健康確保
・継続的な人材の確保
・人材の定着
・生産性の向上
・健康経営の実現
・労働者のワーク・ライフ・バランスの実現
といった、会社経営を持続可能にするものです。
これは忙しさを理由にすることなく、適切な就業上の配慮と治療に対する配慮を確保することにより実現できます。
ただし、健康上の問題は個人によって変わるため、きめ細やかな対応が必要です。
・事業所内のルールの作成と周知
・研修による意識啓発
・相談窓口や情報の取扱方法の明確化
これらを基礎に個々の状態に合わせた、
・勤務時間の配慮
・業務内容の調整
を行うとともに、安心につながる通院休暇、時間単位の有給休暇といった制度を整備することも有効です。
これらの最終判断も事業者が行うことになるので、管理監督者を始めとする監督者が果たす役割は大きいです。
再発予防と長期的な支援体制
これまでメンタルヘルス・マネジメント検定試験Ⅱ種(ラインケアコース)の内容に沿って記事を投稿してきました。
管理監督者の役割としては、二次予防の早期発見と適切な機関との連携が主なものとなります。
しかし、どんなに注意深く見守っても100%対処することは難しく、今回のような休職に至ってしまう場合はあります。
そのような場合でも、職場復帰の流れを用意し、安心して働いてもらえる職場環境を築くことができれば、もしもの時にも適切な対処ができます。
また、作成したルールやプログラムは職場の基準ともなり、メンタルヘルス不調の原因を職場環境から取り除くきっかけにもなるでしょう。
今回の記事で登場したように、事業者から労働者と同僚、主治医や外部医療機関など、職場に関わるすべての人が連携する必要があります。
再発予防と長期的な支援体制を準備し、定期的に見直し、実行することは企業の評価にもつながります。
組織として従業員の健康に投資し続けることは、生産性に直結する持続的なプロセスなのです。
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はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!