三次予防‐医療機関との連携|メンタルヘルス・マネジメント検定試験Ⅱ種(ラインケアコース)

管理監督者がメンタルヘルス対策において担う役割は。

・日頃から部下の様子を観察し不調を早期発見する
・日常生活や業務に支障が出る状態になった部下を適切な機関につなげる

という、早期発見と連携です。

前回の記事では、メンタルヘルス不調となった場合の相談や健康教育といった、一次予防や二次予防で活用できる機関をまとめました。

そのような機関を活用し、予防や早期発見に務めたとしても。

不調が進行してしまった場合、医療機関との連携が必要です。

目に見えない要因を元に診断を行い、状態に応じた適切な治療を行えるのは医師だけです。

そのため、再発防止や社会復帰支援といった事後対応(三次予防)の役割を担うのが、医療機関なのです。

管理監督者は部下が医療機関を利用する場合に備えて、仕組みや治療の基本を知り、職場で行うサポートのポイントを抑えることで。

部下が安心して治療を受けながら働ける職場環境を作ることができます。

メンタルヘルス・マネジメント検定試験Ⅱ種(ラインケアコース)のテキストの内容に基づいて、医療機関との連携についてまとめていきます。

病院と診療所(クリニック)

医療機関と聞いて思い浮かぶのは、病院でしょう。

地域にある身近な病院として、診療所やクリニックという名称もあります。

少し体調の悪さを感じた場合、近所の診療所やクリニックを受診したり。

ちゃんとした検査を受けたる必要がある場合は、病院にかかるというイメージでしょうか。

医療法では入院設備の有無で名称が分けられています。

病院:20人以上の患者を入院させる設備を有する施設
診療所:病床を持たないか、19人以下の患者を入院させる施設を有する施設

病院は、入院治療や高度な検査、急性期の治療に対応でき、集中的な治療が必要な場合に利用でき。

診療所はそのような設備がないため、主に外来診療による初期の診断、薬物療法の管理、精神療法の実施、休職中の定期的な経過観察といった利用となります。

どちらも資格を持つお医者さんにみてもらうので、どちらが良いというわけではなく。

病状によって適切な施設を選ぶことが大切です。

メンタルヘルス関わるものは、「クリニック」が多い印象ですが。

クリニックの医師が入院治療が必要と判断する場合は、精神病床の許可を得ている病院を紹介してもらえます。

また、クリニックにも精神保健福祉士や作業療法士、公認心理師等の、メンタルヘルスの治療・デイケア・リハビリを専門に行えるスタッフも配置されています。

なので、医療機関の受診が必要である状態と認められる場合には、部下の通いやすいクリニックを把握しておくことも連携のために重要です。

産業保健スタッフと連携し、情報を収集しておくことで、スムーズな連携につながります。

精神科医が担う領域

メンタルヘルスを扱うのは精神科医です。

・神経の病気
・認知症
・統合失調症
・アルコール依存症
・気分障害
・神経症性障害
・心身症

といった、専門的な治療を要する精神疾患のすべてを扱います。

その中で、症状や疾患が身体に現れる心身症を主に扱うのが心療内科、精神に現れるものを主に扱うのが精神科と分けられています。

例えば。

胃痛などの身体症状が、内科の受診だけで改善されない場合は心療内科。

不眠や気力・集中力の低下など精神的な症状が強い場合は精神科。

という選択ができます。

患者の状態に合わせて、治療を進めて行くことに変わりはありません。

治療の基本

精神科というと、抗うつ薬などの精神薬を利用した薬物療法が中心のイメージがあるかもしれませんが。

他の科と同じく、まずは休養を取ることが大切とされています。

強いストレス状態によって、心身の不調が起きてしまっているため。

まずはしっかりと休むことで、機能の回復を目指していきます。

なので、安心して休める環境を用意することが重要です。

それと併用して、薬物療法や心理療法、精神療法が利用されます。

メンタルヘルスの不調は、脳の生理学的・機能的な不全状態で起きてしまっています。

脳の機能を回復させるための、神経伝達物質の働きを改善する薬の利用が有効なのです。

しかし、あくまで「改善」です。

薬を飲んだから治るのではなく、メンタルヘルス不調を抱える本人が症状をコントロールし、回復に向かう土台を作るものです。

そのため、職場を含め治療中の周囲のサポートは欠かせません。

薬の種類をいくつか上げると。

・抗うつ薬
気分の落ち込みや意欲の低下の改善。
効果が出るのに2習慣~1ヶ月かかり、改善後も一定期間服用が必要。
パニック障害、強迫性障害、PTSD、摂食障害等に用いられる。
副作用の少ない薬は他科でも処方される。

・抗不安薬
抗うつ薬と併用され、不安を抑え急性期の苦痛を和らげる。
不安、焦燥感に対して使用。

・睡眠剤
抗うつ薬と併用され、睡眠の問題を改善する。
中途覚醒、早朝覚醒、不眠といった症状に対して使用される。
生活リズムの改善にも有効。

・抗精神病薬
抗うつ薬の効果が不十分な場合に処方される。
統合失調症に用いられ、幻覚・幻想や不安や焦燥感が前面に出る場合に使用。

・気分安定剤
気分の波を抑え安定させる作用のある抗精神薬。
抗うつ薬だけでは効かないうつ病や、双極性障害に用いる。

守秘義務とプライバシーの観点から、管理監督者は部下が処方されている薬の種類や効果を直接尋ねるべきではありません。

また、服薬中は飲酒は控えなければならないので、飲み会や接待への配慮も必要です。

メンタルヘルス不調の治療に関する基本的な知識を身に着け。

焦らずにサポートする姿勢を持つことが大切です。

入院治療が必要になる場合

主治医が患者の症状が重篤で、本人や周囲の安全の確保や集中的な治療が必要であると判断する場合、入院治療を行います。

管理監督者としても、非常に深刻な状態にあることを理解し。

人事・産業保健スタッフと連携するとともに、職場全体でのサポート体制を構築しておく必要があります。

公式テキストでは3つのケースが掲載されています。

◯医学的意味で入院治療が必要な場合
・自殺をするおそれがあり、危険性が高く、たとえ家族と同居していても防ぎきれない
・重度のうつ病で食事も十分にとれず身体的な管理が必要

◯自傷他害のおそれが強い、社会的な信頼を失う場合
・統合失調症で幻覚妄想状態が強い
・躁うつ病での躁状態がひどい

◯その他
・ひとり暮しで日常生活や生活リズムを保つことが困難
・ひとりでいるのが不安
・規則的な服薬を守れない

参考:公式テキストP.281

医療機関との連携

主治医は患者の状態を観察し、正確な診断を心がけ、適切な治療法を決定します。

そのうえで、休職や復職の判断に関わる意見書を作成します。

職場はその内容を最大限に尊重し、時短勤務や業務軽減といった就業場の措置を検討します。

検討する際、主治医に的確な情報を提供し、必要な配慮を相談することも有効です。

そのようにすることで、適切な治療、早期の病気改善、再発防止につながります。

管理監督者などが直接主治医と連携するには、本人の同意が必要なのは忘れてはなりません。

望ましいとされているのは、本人を交えて管理監督者や医師が情報共有を行うことです。

休職する時、復職する時、治療を受けながら就業する時で必要な情報が異なるため、問題の発生を未然に防ぐことにもつながります。

このように細やかな連携が必要となるため、医療機関と連携を取る窓口は一本化しておくことが進められています。

連携先の医療機関の負担軽減や、情報の整合性の維持につながりますし、利用する本人にとっても職場内での窓口がわかりやすくなることにつながります。

また、職場内で本人と関わるのはひとりではないため、主治医からの情報を文章にまとめ、必要最低限の関係者で共有しておくことも大切です。

企業と医療機関の連携になるので、費用請求について前もって取り決めておくことも重要です。

このような適切な連携は、復職プランの作成時にも必要です。

専門家の力を借りて安全・安心を

メンタルヘルス不調の治療は、本人・職場・医療機関の連携により成功に向かいます。

途中で書いたように、短期間で改善に向かうものではないのが、メンタルヘルス不調です。

長い治療期間の中で、良くなったり悪くなったりを繰り返し、徐々に回復に向かいます。

一番つらいのは本人であることを理解し、職場や管理監督者は向きあい続けることが必要なため。

職場環境の改善や医療機関との連携の仕組みを整えることは、本人はもちろん、職場への負担軽減にもつながります。

治療のプロセスを把握し、部下を支え、良好な職場環境を目指すことも管理監督者の役割です。

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著者プロフィール
ぽんぞう@勉強中

はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!