心理的安全性は環境作りの先を見据える

このブログでもちょくちょく言葉に出ている「心理的安全性」。

チームの生産性を上げ、職場環境の改善に活かしたい取り組みとしてよく取り上げられます。

以前に扱っている本についてもレビューを投稿しました。

その後、心理的安全性について見聞きすることも増え、レビュー記事の内容が心理的安全性と心理的柔軟性をどう個人で活用するかで書いたこともあり。

もう一度、ちゃんと書いてみようかなと。

とはいえ、基本的なことは(思ったより)ちゃんと書いていたので。

ササッと本題に行きます。

心理的安全性の誤解

誤解という言葉であっているかは分かりませんがー。

心理的安全性が「居心地の良さ」や「気軽に意見を言える雰囲気」を作り、「個人が安心して働ける環境にする」ことが目的になっているような気がします。

チーム作りや職場環境の整備の文脈で語られることが多いため、そのような扱いになるのもしょうがないんですが。

心理的安全性を提唱された、心理学者エイミー・C・エドモンドソン教授の定義では。

チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと

心理的安全性の作り方(著者:石井 遼介) P.22より引用

となっていて、チームメンバーが対人関係のリスクを取る行動を促す環境であること言えます。

なので、リスクを取る行動という安全の印象とは少し離れた行動を求めるわけです。

冒頭の職場環境作りは間違っている訳ではないですが、これは一つの通過点にすぎないということです。

その先にある、「チーム内で言いにくいことを伝え、建設的に議論できる場」とすることが目的となります。

それによりチームの目標に対して、チームの学習を促し、集団として生産性の高い状態を生み出すことができる。

この考え方が心理的安全性です。

これと、仕事の要求度という、仕事の質や量で求められるものが相当程度の高さである時、高いパフォーマンスを発揮できる集団であることが。

Googleを始めとする、心理的安全性の実践に取り組んできた企業が実例を示しています。

なので、決して中が良くてメンバーの意向だけを聞くような「ヌルい」チームではなく、自分やメンバーとの能力をかけ合わせ高い目標の達成を目指していく、理想的なチーム作りを目指すための概念なのです。

リーダーだけが作れるわけではない

チーム作りのことなので、影響力が強いのはチームを引っ張る立場にいるリーダーとされています。

まぁ、それは当然というか。方向性を決めたり、判断を下す立場の影響が強いのは当然です。

失敗に対してリーダーが否定的な反応を示せば、メンバーは沈黙を選ぶ可能性が高いでしょう。

自分も他のメンバーも否定される状況になったり、リーダーの反応が長続きすることによる悪い空気を避けるためです。

しかし、失敗したことを受け入れ、問題を見つけ出し、対策をともに考えるような、失敗を共有する姿勢を見せると、全く逆の反応になるかもしれません。

問題のポイントや対策の方法などの観点は人によって違うため、新たな気付きに繋がる可能性もあります。

このように、リーダーの言動により、チームの姿勢が変わってきます。

なので、心理的安全性についても、リーダーの捉え方で大きく効果が変わります。

前述した誤解のような、安心だけを考え受け入れていると、いわゆる「ヌルい」組織になるのも当然です。

リーダーシップ論は色々と提唱されていますが、基本的には他者に影響を与えるための能力をどのように活かすかというものです。

提唱されるスタイルを、相手や状況に合わせ効果的に使い分けることで、効果的なリーダーシップを取ることができます。

そのような柔軟性を、「心理的安全性の作り方」の中で「心理的柔軟性」と呼び、リーダーに必要な能力として説明しています。

一応、レビュー記事でここらへんは触れてますので、興味のある方はどうぞ。

リーダーが心がけることで、心理的安全性の入口を作ることはできますが。

先程の簡単な例の通りで、メンバーからの反応も無ければ、この環境を作ることができません。

つまり、メンバーも「言いにくいこと」を勇気を持って言う努力が必要です。

これを言いやすい状況を作るまではリーダーにできますが、そのさきはメンバーの協力が必要だということです。

そして、リーダーもメンバーが「無理をして」「言いにくいこと」を言ってくれるということを理解し。

メンバーが「言いにくいこと」を「聞いてもらえる時間」であり、その準備を常にしておくことが大切です。

そのような双方向の関係性づくりが欠かせません。

不安を回避する無意識の行動であることを理解する

自分の言いたいことを常に言えるような人はいます。

そのような人からすると、自分の言いたいことを言えないというのは不思議なことでしょう。

私もどちらかと言うと言えない方ですが、言わないことでチームの不利益になるかもしれないと考えて勇気を持って発言することはよくあります。

奮い立たせないと、発言できないんですよね。

しかし、なぜ言えないのか?

引用したエドモンドソン教授の言葉を借りれば、「対人関係のリスク」があるからということになります。

このリスクは、行動したことによって無知・無能・邪魔・否定的だと思われたくないという、不安だとされています。

そのようなネガティブな反応を避けるために、無意識のうちに沈黙・同調・回避という行動を選択するとのこと。

この思われたくない感情に至るのは、言ったりやってしまった側からすると「そんなことで」と考えやすい些細な一言だったりします。

また、状況的に言ったり行動して当然だと思えてしまう場合もあります。

しかし、この根本を考えると。

・受け入れてもらえるか?
・協力してもらえるか?
・バカにされないか?

という不安を掻き立てるものであることは理解できます。

私が発言を苦手とする理由に、やはり「受け入れてもらえるか?」という不安はありますね。

これはある意味、チームの「和」のために無意識で取りやすい行動なのかもしれません。

・・・無意識なのに取りやすいはなんとも変な感じですがw

この不安を乗り越えるように、メンバーとかかわるのが心理的安全性です。

このよう不安は、個人の生産性を落とすことにつながり、チームとしても学習機会が減るため、パフォーマンスが上がりません。

なので、心理的安全性の高い職場は、不安を共有できる状態であるということも理解しておきましょう。

リーダーも成果や期限といった仕事の要求に対する不安もそうですが、必要な情報や作業をメンバーが返してくれるかという不安もあります。

メンバーとしても、リーダーが自分の意見に対して協力的に対応してくれるのかという不安もあります。

たぶん、人間であるかぎりこの悩み(壁)は無くならないでしょう。

壁を少しでも低くするために、心理的安全性により土壌を上げて行きたいですね。

変化による不安も影響が大きい

と、対人関係リスクの原因となる不安についても考えなくてはなりません。

社会が変化すると、仕事や働き方だけでなく生活も変化します。

すると、日常の出来事が仕事に影響を与える不安も増えています。

心理的安全性の文脈で出てくる不安というものは、これに影響していることが大きいでしょう。

メンタルヘルス・マネジメントの記事でも書いていることですが、ライフイベントによって様々な問題を抱える場合もあります。

働き方自体を変えたり、配慮してもらうことで、迷惑をかけるとかお荷物だと思われるとか。

そういうように考えてしまう場合はあるでしょう。

働き方に対応し、ワーク・エンゲイジメントを高めるために、先端技術を導入するかもしれませんが。

それ自体が不安になる可能性もあります。

特に、現在のAIの状態は、業務構造を根本から変える可能性もあり。

「AIに仕事が奪われるのではないか?」という不安を抱えてる方は多いかもしれません。

ニュースで該当インタビューされるくらい、関心の高いことでもありそうです。

これについても、私の考えですが記事に書いてますのでよろしければ。

この記事でも書いた内容にはなりますが、AIができることとできないこと、人間にしかできないことといった、AIに対する考え方や方向性を示せなければ、なかなか解消は難しいかもしれません。

しかし、それでも、自己効力感や役割がなくなるかもしれないという心理的不安を完全に拭うことはできないかもしれません。

ただ、業務の効率化や会社の利益になることが分かっているので、こういった不安を口にしにくい状態になっているかもしれません。

これは、心理的安全性の壁で書いた「無知・無能・邪魔・否定的だと思われたくない」という不安とイコールではないでしょうか?

なので、今のAI時代に大切な心理的安全性は、AI導入による不安を共有し、チームの学習に変えることだと、私は考えます。

心理的安全性の構築に時間がかかるということは

先程の「AIが仕事を奪う」についての記事の中で。

AIの活用で時間が生まれ、人間にしかできないことにより時間を使うことができる。

それを、仕事として評価される状況が必要だ。

ということを書いています。

そして、心理的安全性は無意識で回避してしまう行動を乗り越えて、ポジティブな意見のやり取りを行得る状態を作る、人工的な取り組みです。

つまり、その状況を継続し、メンバーが心理的安全性を理解しリーダーとチームを信用できる状態になって初めて、心理的安全性が高い状態といえるでしょう。

なので、この心理的安全性の構築によってメンバーがお互いに向き合い、高いパフォーマンスを作り出す状態作りを、一つの仕事として認識することができます。

これはメンバー間でも同じで、作業だけでなくメンバー同士の交流にも時間を使う方が、より心理的安全性は高まります。

先程のAI導入に関する不安も、これにより解消できるはずです。

「仕事がなくなるかもしれない」という不安がわかれば。

どのように活用するのかや、それによりどういうことに時間を避けるようになるのか。

まずは、自分自身が起点とならなければ、今のところAIを活用することはできないこと。

そういったことを議論し、不安を和らげ。

変化にチームとして対応するとともに、AI技術の恩恵をメンバー全員が受けることにつながると思います。

リーダーにとっても、AIを自分の知能の拡張として利用できれば、よりメンバーに向き合う時間を作ることができ。

技術の利用という意味でも、率先垂範できるのではないでしょうか?

様々な「不安」を共有できる強い組織に

心理的安全性とは、単なる働きやすい職場環境ではなく。

チームとしての目標の達成に向け、挑戦と失敗を受け止め、チームの学びにし高いパフォーマンスを発揮ス続けるための関係性です。

この関係性を作ることで、内部の問題はもちろん、外部の問題に対しても前向きに対処できるようになります。

能力が高い人を集めたチームよりも、心理的安全性の高いチームの方がパフォーマンスは高いという結果もあります。

しかし、人間関係に関する取り組みなので、時間がかかってしまうものです。

それを、AIなどの最新の技術なども利用することで時間を生み出し。

将来にわたり大きなメリットを生む、心理的安全性の構築に時間をつかえる。

このような良いループになれるように、取り組んでみましょう。

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もしあれば、どんなことでも構いませんので、コメントを残していただくか、問い合わせフォームよりご連絡ください。

著者プロフィール
ぽんぞう@勉強中

はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!