働き方と心の健康:過重労働・ハラスメント・テレワークなどの職場環境について|メンタルヘルス・マネジメント検定試験Ⅱ種(ラインケアコース)

情報技術の発展とともに、働き方が多様化しています。

求められていることや、職場での人間関係も変化していく中で、業務内容そのものよりも、働き方や人間関係に疲弊していませんか?

メンタルヘルス・マネジメント検定試験Ⅱ種(ラインケアコース)の内容を下に、状況を見ていきます。

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職場環境とメンタル不調の状況

厚生労働省が実施した令和6年の「労働安全衛生調査」(有効回答数、個人:8,596人、事業所:8,304事業所)によると。

「仕事や職業生活に関することで強いストレスとなっていると感じることがある」と答えた労働者は68.3%と、有効回答数のうち約5,800人となります。

令和5年や令和4年調査に比べると減少傾向ではありますが、原因の上位は変わらず。

・仕事の量:43.2%
・仕事の質:26.4%
・仕事の失敗・責任の発生:36.2%
・対人関係(セクハラ・パワハラ含む):26.1%

と、働き方や人間関係に関わるものが占めています。

また、事業所を対象にした「過去1年間にメンタルヘルス不調により連続Ⅰヶ月以上休業した労働者がいた」という問いに、「いた」と回答した事業所は10.2%でした。

これは令和4年調査から横ばいです。

個人では減少していますが、事業所として横ばいということは、職場環境がメンタルヘルスに与える影響の大きさは変わっていないとも言えます。

もちろん、労働者数の増減も関わることなので、一概にはいえませんが。

なので、職場環境もストレッサーとなることを理解する必要があります。

このような調査の状況を踏まえて、労働者に近い立場で働く管理監督者が果たせる役割は大きいもの。

・物理的な職場環境
・労働時間
・仕事の量と質
・人間関係
・組織および人事労務管理体制
・風土や文化

こういったものが、メンタルヘルスに影響を与えることを理解し。

職場環境の改善や部下の健康管理に配慮し、メンタルヘルス不調を職場というシステムの問題として捉える必要があります。

管理監督者はこれらのストレス要因に対策を講じやすい立場にいることも事実です。

・チームワークの改善
・業務の分担や流れの調整
・各々の労働者への配慮

これらの方法を知り、ストレスを軽減し、職場環境を整えることも重要な仕事です。

業務上の心理的負荷となる出来事

これからいくつか心理的負荷となる内容を見ていきますが。

職場環境という業務上の内容なこともあり、厚生労働省が提示している「労災認定基準」が参考になります。

職場においてメンタルヘルス不調が発生した場合、労災の対象となる場合もあるので把握しておくと助けになるでしょう。

まずは、業務上の心理的負荷となる、重大なストレッサーについてです。

「労災認定基準」では、「特別な出来事」と「特別な出来事以外」でどのようなものが強い心理的負荷になるか提示されています。

特別な出来事

◯心理的負荷が極度のもの

・生死に関わる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺症を残す業務上の病気・ケガ
・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死に関わる重大なケガを負わせた
・強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアル・ハラスメントを受けた
・その他、上記に準ずる程度の極度と認められるもの

◯極度の長時間労働

・発病直前の1ヶ月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間におおむね120時間以上の)時間外労働を行った(休憩時間は少ないが手待時間が多い場合等、労働密度が特に低い場合を除く)

特別な出来事以外

①事故や災害の体験

・(重度の)病気やケガをした
・悲惨な事故や災害の体験、目撃をした

②仕事の失敗、過重な責任の発生等

・業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起こした
・会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをし、事後対応に当たった
・会社で起きた事故、事件について、責任を問われた
・自分の関係する仕事で多額の損失等が生じた
・業務に関連し、違法行為を強要された
・達成困難なノルマが課された
・ノルマが達成できなかった
・新規事業の担当になった、会社の建て直しの担当になった
・顧客や取引先から無理な注文を受けた
・顧客や取引先からクレームを受けた

③仕事の量・質

・仕事の内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった
・2週間以上にわたって連続勤務を行った

④役割・地位の変化等

・退職を強要された
・配置転換があった
・転勤をした
・複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった
・非正規社員であるとの理由等により、仕事上の差別、不利益取扱いを受けた

⑤パワーハラスメント

・上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた

⑥対人関係

・同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた

⑦セクシュアルハラスメント

・セクシュアルハラスメントを受けた

公式テキストより抜粋 P.155:図表1 P.156~159:図表2

ここで上げられている内容は、トラウマとなりうるもので、重度のメンタル不調に至る可能性があります。

負荷の強度にかかわらず、重大なストレッサーが生じないように職場環境を整えると共に。

発生してしまった場合に、該当する労働者の心のケアを行う仕組みを、専門機関との連携も含めて用意しておく必要もあります。

過重労働(長時間労働)

長時間労働は労働者の健康を守る意味でも対策が必要です。

脳・心臓疾患を引き起こす過労死が社会的な問題となり、様々な対策が取られていますが。

その原因の一つとなっている上に、メンタルヘルス不調との因果関係が認められているのも、長時間労働です。

過重労働により睡眠不足に陥った労働者は、心身の疲労が回復せず体調不良となります。

その結果、ストレスへの対処能力が低下してしまいます。

また、脳の疲労も回復しないため、睡眠の質が悪化し精神面での不調を抱えるようにもなります。

さらに睡眠不足により生活時間や食生活といったライフスタイルにも影響があり。

不健康リスクが高まる原因にもなりかねません。

長時間労働に関する基準

労働時間については、労働基準法第32条で1週間で40時間以内と規定されています。

時間外労働を依頼する場合にも、同法36条のいわゆる36協定において、1ヶ月の上限が45時間と定められています。

しかし、人手不足や業務上やむを得ない事由などにより、上限時間以上の時間外労働を依頼する場合もあります。

労働安全衛生法では、1月あたりの時間外労働や休日出勤が80時間を超える場合、医師による面接指導の対象としていたり。

労災認定においても過労死基準として、1ヶ月で100時間または2~6ヶ月平均80時間と設定し。

過剰な時間外労働を規制する制度があります。

先程上げた「特別な要因」でも、長時間労働が提示されていますし。

長時間労働と心理的負荷が中程度のストレス要因が合わさると、心理的負荷を「強」として判定するなど。

基準も明確に示されています。

過重労働対策

このような長時間労働を防ぐ取り組みは、「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」で示されています。

①時間外・休日労働時間等の削減(努力義務)
②年次有給休暇の取得促進
③労働時間等の設定の改善
④労働者の健康管理に係る措置の徹底

まずは、業務内容等を見直し、時間外労働や休日労働をしなくて済むように務めます。

さらに、有給休暇の取得を促進することで、連続勤務とならないように休日を増やし。

短時間勤務などワーク・ライフ・バランスを念頭においた労働時間の見直しを行い。

労働時間の把握を適切に行いつつ労働者の様子を観察し、健康管理にも関わっていく

このような流れで対策を取ることが求められています。

長時間労働がメンタルヘルス不調だけでなく、様々な病気にも関連していることを覚えておきましょう。

パワーハラスメント

パワーハラスメントは「労働施策総合推進法」の改正で定義され、以下の3つの要件を満たすものとされています。

①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動である
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③その雇用する労働者の就業環境が害されること

そして、同改正によりパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業者の義務とされています。

代表的な6つの類型は以下です。

①身体的な攻撃(暴行・障害)
②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とが離れた過小な要求、仕事を与えない)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)

パワーハラスメント等のハラスメントは職場環境の悪化につながり。

能力を十分発揮することの妨げになるとともに、人権に係る重大な問題です。

事業者は適切な相談窓口を儲けたり、教育・啓蒙活動を実施しつつ。

自らもこのような行為を行わないように注意しなければなりません。

労働時間外の負荷要因

労働者はそれぞれの生活をもとに、職場で仕事を行います。

そのため、労働時間以外のストレス要因により仕事のパフォーマンスが落ちる可能性もあります。

また、先程も書いた通り、複数の負荷要因により仕事でのストレスが増大する場合もあります。

そのような状態を防ぐために取り組みたい視点が、ワーク・ライフ・バランスです。

ワーク・ライフ・バランス憲章では、仕事と生活の調和がとれた社会を。

国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった各段階に応じて多様な生き方が選択実現できる社会

公式テキストP.50より引用

と定義し、そのための取り組みや数値目標を上げています。

また、厚生労働省の定める「心理的負荷による精神障害の認定基準」では、心理的負荷の高い業務以外の出来事として、以下を上げています。

・自分の出来事:離婚、別居、重い病気やケガ
・自分以外の家族、親族の出来事:死亡、重い病気やケガ、世間的にまずいことをした人がでた
・金銭関係:多額の財産の損失、突然の大きな出費
・事件、事故、災害の経験:天才や火災にあった、犯罪に巻き込まれた

大切なものを失う喪失体験や、ライフステージの変化に伴う責任の増大や悩みの発生など。

誰もが抱える問題でもあります。

なので、日頃から部下の様子を確認し、必要な支援を行う体制を整えることも重要です。

テレワーク等による変化

テレワークなどのオンラインツールの普及により、働き方、ビジネスのあり方、家族のあり方に変化が訪れています。

機器やソフトウェアの使用など、新たに覚えることや今までと仕事の流れが変わることになるので。

導入自体が一つのストレスとなっています。

それらはマニュアルやサポートなどで一定のケアは可能ですし、労働者の自由な働き方につながるものなので、多くの企業や個人に受け入れられています。

その一方で様々な問題も発生しています。

まずは、テレワークなどの在宅勤務により生活の場で仕事をすることになり。

労働時間の境界線が曖昧になり、結果的に長時間労働を助長していることになっている場合もあります。

業務効率化のために行った施策が、労働負荷を質的にも量的にも増大させている可能性につながります。

また、生活環境との境界線も曖昧になるので、生活習慣がみだれてしまい。

生活習慣病の増加につながる可能性もしてきされています。

そして、他者との偶発的なコミュニケーションも減り、孤立感を強めてしまうかもしれません。

心の病が増加しているという企業では、「業務上の助け合いが少なくなった」「職場でのコミュニケーション機会が減った」という回答の特徴があることから、コミュニケーション不足は大きい問題であることがわかります。

コミュニケーションを取れたとしても、カメラ等に映る一部でのやり取りとなるため。

情報の伝達がうまく行かずに問題が起きたり、誤解の発生につながる場合もあります。

コミュニケーションは情報電圧の媒体としての機能でもあり、関係構築のための効果もあります。

そのため、意図的にコミュニケーション機会を創り出したり、声かけを徹底するなどの行動も必要です。

また、業務や業務内容に応じたマネジメントの最適化も大切です。

管理監督者の行動

以上の問題をはじめ、様々な要因が職場環境を原因とするメンタルヘルス不調と関連しています。

メンタルヘルス対策の公法的規制における中核となる「労働者の心の健康の保持増進のための指針」においても。

作業方法・コミュニケーション・職場組織の改善などが、労働者の心の健康の保持増進に効果的であるとされています。

管理監督者は部下である労働者と日常的に接しているため、上記への取り組みが比較的しやすい立場にいます。

管理監督者はそれらに対応するため、組織論・人事労務・ストレスマネジメント・リーダーシップなど幅広い知識が求められます。

知識を駆使することで。

・有給休暇取得の推奨や業務配分の見直しによる、労働時間管理
・職場環境を整え、ハラスメントの防止につなげる
・積極的に声掛けを行い変化に気づき、早期の対応できるようになる

とい状態を作り出せます。

これはメンタルヘルス対策だけではなく、業務の見直しによる効率化にもつながります。

労働者個人の生産性も、組織としての生産性も高めることに繋がる活動です。

職場環境を整えストレス要因を取り除く

管理監督者目線からのストレス対策の基本的な視点は以上となります。

施策や制度などに対して責任を持つのは事業者ですが。

その施策や制度を履行するのは、管理監督者です。

会社の方針に従いつつ、一緒に働く部下たちの生産性を保つ。

なかなかに高度なことを要求されているような気がします。

少しずつ、身につけていきたいものです。

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著者プロフィール
ぽんぞう@勉強中

はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!

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