生成AIの副業利用の先に見えたもの
最近、朝会社のPCを立ち上げた時にニュースに必ず上がってる印象なのが。
生成AIを利用した副業の記事です。(リンクはそこらへんが集まったYahooニュースの記事です。)
大まかにまとめると。
・自分の経歴やスキルの棚卸し
・ChatGPTに副業を提案させる
・副業ゲット!
という感じです。雑すぎますが。
生成AIの使い方の参考になるなと思いながら読んでいたところ。
いろいろなところで、暗黙知の形式知化とか、経験の継承ということを聞くようになりました。
「生成AIを使えばできる!」と言われますが。
わかりやすく、生成AIを利用した副業のオススメ記事達の内容を活かせばわかりやすいのではないかと。
少し考えてみました。
AI利活用は次の段階に
テレビ番組でも、ChatGPTをふだんから使っている一般の方のインタビューがあったり。
スマホでも気軽に使えるので、個人レベルでの利用は進んでいるように思います。
チャット形式のUIの受け入れやすさというのもあるのでしょう。
ですが、企業利用だと伸び悩んでいるのが現状です。
とはいえ、利活用が進んでいるところだと、AIエージェントの導入という段階に入っているようです。
社内に蓄積されたデータを学習したエージェントAI達と、それらを統合しタスクを実行するスーパーバイザAIによる自動化の実現・・・という文脈ですかね。
とはいえ、複雑な内容を実行するには、熟練者の経験や知識が必要であると。
それらが、暗黙知と言われているもので、形式化、データ化の難しい知識です。
たしかに、熟練の方々は自分の技術や知識もそうですが。
社内ルールに則った方法など、現場レベルでの高度な判断にも長けています。
だからこそ信用されているわけですが。
AIを使うだけでは、その部分をフラットにすることは難しいでしょう。
なので、暗黙知をどう形式知化するか?という問題が立ち上がるわけです。
ある意味、AI利活用の段階が進んで、専門性の高い自社専用とも言えるAIの利用を考えているということですね。
それと同時に、AIにより業務が効率化されることで。
コストが削減され、整理されていきます。
そうすると、その空いた時間をどうするか?という問題が出てきます。
人員整理という流れになるのではないか?という不安が出てくるのもある意味では当然です。
そんな中で必要とされているのが、企業にとっての新領域の開拓のようで。
雇用の維持という意味合いなのか、価値創出の意味合いなのかは企業によるとは思いますが。
AI自体で利益を生むことが目的になってくるようです。
なので、AIの利活用の段階は先に進み、AIをツールとして使うのではなく、パートナーとして使う段階にきたんだなと思ったわけです。
思ったと言ってもここ最近で思ったわけではなく。
このブログでも何度か書いてますが、AIを人間の脳の拡張と考えた場合、当然の流れだとは思ってます。
で、ここらへんの話を聞いた時に思い出したのが、冒頭で紹介した生成AIを利用した副業記事でした。
個人でも企業でもビジネスはビジネス
生成AIが出た頃は、画像生成ができるとか、文章生成ができるとか。
その生成物をどのように扱ってビジネスに繋げるか?
という流れだったかと思います。
AIの能力が増したことで、戦略的な組み上げもできるようになり。
さらにWEB検索も可能になったことで、より現実の情報を元にした推論ができるようになってきました。
その高い推論能力と情報収集能力を使用して、AIにビジネスを提示させ。
実現可能性の高いものを、人間が実行していく、というのが今の生成AIを使った副業のすすめのようです。
話題の領域を知り、そこに参入する方法を提案させるという使い方もありますが。
ある意味ではスモールスタートができて、負荷もあまりかからない、本職を元にしたビジネスを立ち上げることが進められている印象です。
なので、冒頭のざっくりまとめた内容のように。
「自分の経験やスキルの棚卸し」から始めることを進められます。
そこからどのような価値を提供できて、どのように市場に提供すれば良いかのロードマップをAIに作ってもらう形です。
このようにして、本職を元にした事業を起こすことができますが。
たぶん、実行する場合は100%本職と同じというわけには行かないと思います。
副業となると、本職と同じ時間を使うことは難しいと思うからです。
例えば、本職が9時間拘束だとして。
睡眠時間で8時間、3食と通勤を合わせて5時間くらいでしょうか。
すでに、9+8+5=22時間となり、副業に使える時間は2時間となります。
調整しても、健康に過ごすことも考えると、4~6時間というところでしょう。
なので、本職の内容の一部を行うか、横にずらして違う方法で価値を提供するというのが現実的です。
責任という意味でも、内容という意味でも、本職とは別のビジネスを立ち上げることになると考えられます。
ビジネスを個人で立ち上げるのであれば、企業にも応用できるのではないか?と思い。
思いを巡らせた結果、生成AIのUIも考えると。
「熟練者が生成AIを使い、新規事業を立ち上げる。」
というのが、暗黙知の形式知化と新規事業の立上げを両立する方法ではないかと。
想定する流れ
ということで、少し生成AIに手伝ってもらいながら。
実現できそうな方法を考えてみました。
熟練者の思考・判断を学習させる
まずは、暗黙知の内容を明らかにします。
データにしにくいのが暗黙知なので。
その経験や思考を持っている熟練者にAIに教えてもらうつもりで、日常業務や業務改善に取り組んでもらいます。
いわば、熟練者が上司となり、生成AIという部下に知識や経験を伝えていくニュアンスです。
業務によってはシミュレーションという形での実施も必要そうですね。
実際に行う場合には、自分の知識の整理を手伝ってもらうプロンプトにしながら、状況に合わせた判断を入力してく感じでしょうか。
例えば、こんなスタートで。
私が普段業務で行っている◯◯について、判断するときに考慮しているポイントを整理したいです。私の説明を聞いた上で、その背後にある暗黙的な判断基準を推測し、リスト化してください。
ここで整理する内容の中に、社内ルールなどの会社の情報も整理することで、より自社の業務に近い内容をAIに学習させることができるかなと。
このような生成AIとのやり取りによって出てきたログを、実際にAIに学習させたり。
熟練者が発見した効果の高いプロンプトを共有することで、暗黙知がだんだんと企業専用の形式知になっていくと思います。
仮説を立てる
社内の情報とそれを使いこなして成果をあげてきた熟練者の方の知識。
これが、個人でいうスキルや経験の棚卸しになると考えています。
現実的には。
・熟練者の知識や経験を学習したAI
・会社のデータを学習したAI
といったマルチエージェントになるかとは思います。
ただ、そうなると少し敷居が上がってしまうので。
最初のプロンプトで熟練者が自分自身で暗黙知の言語化に成功すれば、以下のようなプロンプトで新規事業領域の探索ができるのではないかと。
以下に挙げる私の経験・判断基準と、会社が保有する顧客データや市場情報を組み合わせてください。その上で、新しい事業機会や研究テーマを3〜5件提案してください。それぞれについて、解決する課題、対象顧客、実現可能性の理由を整理してください。
形式知化して汎用的にするなら、AIに学習させたいところですが。
新規事業の発見を目的とした、生成AIとのやり取りで始めても大丈夫だと思います。
その場合はログが宝になりますね。
検証してさらに形式知化を進める
提案された事業から、一つを選択し実際に実行してみます。
このときはチームとして動いてるかもしれませんが。
基本的には、この間も生成AIを通して、考えを整理しながら事業を進めます。
実行している間に起きた問題や課題と、その解決方法を熟練者としての判断で調整していく感じです。
それを形式知にできるように、記録方法もAIに提案させ、統一します。
プロンプトとしてはこんな感じでしょうか。
この新規アイデアを小規模に検証したいです。実行可能な最小単位の実験計画(PoCプラン)を提案してください。また、実験で得られる知見をどのように記録・形式知化すべきかも併せて示してください。
実行することで、棚卸しでは気が付かなかった、経験やスキルに基づく判断を見つけられるでしょう。
全く同じ状況ではないにしても、実際にプロジェクトとして進める中で、似たような状況で判断することになり。
熟練者自身が、どのような判断をしているのかを思い出しやすくなる、符号化特定性原理が働くことを期待できます。
それをさらに形式知化して、再利用性を高めることが目的です。
目的を見失わない
このようにすれば、暗黙知を実践に近い形で形式知化できるのではないかと思ったのが始まりです。
私自身が、冒頭の副業記事の内容に近いかたちで、自分の経験やスキルの棚卸しをしたことがありますが。
生成AIとやり取りをしつつ、整理をしていくと。
気がつくことや思い出すことが多かったんですよね。
生成AIの提案に対しても、こちらの意見や取り入れて欲しい内容を伝えることができたり。
そこから推測できる効果を検証してもらえたり。
自分の持つ価値をどのように違う形で提供できるのか。
発見につながった経験があります。
実際、仕事でやってきたことやできることの棚卸しを行い。
そのように生成AIとのやり取りで生まれたものを元に、本業の中で実験をしてみています。
ただ、暗黙知の形式知化を目的にする場合は、新規事業の成功を目的にするのは避けた方が良いでしょう。
もしうまく行かなかった時に、「やっぱりAIは・・・」となっては本末転倒です。
逆に、新規事業の成功を目的とする場合、ログの蓄積や記録の管理方法などをしっかりしないと、熟練者の負荷が高いだけになってしまうでしょう。
どちらにしても、目的は見失わないことが重要です。
熟練者にも寄り添う
会社のためにとは言え、熟練者が生成AIを使うのに抵抗がある場合もあります。
私の勤務先の平均年齢は比較的高齢な方なんですが。
ITツールの導入に、抵抗を示すのを良く見ますし。
使うのに興味があっても、理解が追いつかない場合もあったりします。
データ管理や分析、プロジェクト管理等は手伝えるとは言え。
チャット形式のテキスト入力が面倒と感じる場合もあるでしょう、
なので、音声入力ツールを導入するというのも一つの手です。
また・・・短気な場合もあるので、できるだけリアルタイム性の高い入力にする方が良いでしょうね。
自分の勤め先だけかもしれませんが。
自分の話した内容を、文章として確認できれば、熟練者も安心できるのではないかなと。
あとは、データを記録するツールやプロジェクト管理ツールなど使用するモノを社内で統一することで、フォローもしやすくなると思います。
貴重な経験やスキルを利用させてもらうので、熟練者に寄り添うことも必要だなぁと。
そんなことを思いました。
会社の財産を有効利用したい
会社で成果をあげてくれていたり、長く貢献してくれている人達自体が財産ですが。
その人たちが持っている経験や知識といった暗黙知も、貴重な財産です。
判断や決定をするのは今のところ人間の役割ですが、それを補助するのがAIの役割です。。
補助の精度が上がれば、より効果的な判断につながるでしょう。
個人向けの副業の記事から、規模の大きなことを考えてしまった気もしますが。
生成AIを利用した価値の創造方法の一つとして利用できるのではないかと思います。
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