【読書記録】AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣(著者:越川 慎司)|ツールが変わっても変わらないものに力を向ける

2025年1月8日

最近はあまり聞かなくなりましたが、「人間力」という言葉が20年ほど前(この記事を書いているのは2024年)は良く聞きました。

「人間力」とはWikiペディアによると。

社会を構成し運営するとともに、自律した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力

人間力 Wikiペディア

と定義されています。主に学校教育のありかたについての会議で定義されたようです。

曖昧さを含む表現として、あまり使われなくなったようですし、自分自身も考えなくなってましたが。

それでも、人としての魅力を強く持っている人を表す言葉として自分の中では残っていたようです。

今回の本「AI分析からわかったトップ5%リーダーの習慣」を読み終わって、真っ先に思い浮かんだのがこの「人間力」をいう言葉でした。

変化が早く。しかもその流れが強力な現代においても、変わらない本質的な力。

それがAIの分析によって裏付けられた。

という印象を、本から受けました。

18,000名のサンプルデータから得たインサイトの提供

IT技術の発達や社会情勢により、働き方や仕事内容の変化が早い現代。

私達には、それに合わせて自分の行動を変え、成果を出すことが求められています。

そんな中で、本書の著者である㈱クロスリバーCEOの越川さんは、変化の中にあっても成果を出し続けているリーダー(本書の中で「トップ5%リーダー」と表現されています。)の共通点を、AIによる行動分析と実地検証により見つけ出し、この本を出版されました。

検査対象は18,000名に登り、アンケートなどの構造化データからインタビュー風景や会議風景といった非構造化データも分析したとのことです。

かなり膨大な量のデータを分析されたことが伺えますが、それを可能にするのがAIの分析利用です。

そこから見出された共通点をこの本により共有し、読者の行動を変えたいという気持ちが伝わる内容です。

元々はAI利用の実例を知るために手に取った

と、自分がこの本を選んだ理由は、AI利用の実例として読んでみたいと思ったからです。

ChatGPTなどの生成AIが登場してから、AI利用は身近になったものの。

実際に仕事や私生活で活かすとなると、扱いきれない・・・という時期が自分にありまして。

それなのに世の中では、AIを利用したサービスがどんどん提供されるようになり。

これはユースケースを知って、どの様にAIが利用されているかを知らないとなぁと。

そんなことを思っていた時に、目に止まった本です。

なので、「実際にAIで行動分析をするとどんなインサイトを得られるのか?」ということを知るつもりで読みはじめましたが。

読み終わった結果、冒頭の「人間力」を思い出したことに繋がりますが、

「AIのような「ツール」に振り回されてはいかん!」

・・・ということを知ることになりました。

わかりやすく「行動」を促している各章

と、本を選んだ当初の目的とは違う印象を受けることになりましたが。

この本の出来上がりをなんとなく考えてみると。

今はデータ活用の時代で、データから何かしらの結果を得ることが求められています。

つまり、「入手したデータからどんな問題を解決したいのか?」という問題設定が大切です。

この本では、変化の速い現代においても変わらず成果を出し続ける「トップ5%リーダー」がいて、チームや組織の方向性を決めるこれらリーダー達の共通点を、考えや行動をAIで分析したデータから見つけ出したい、という問題設定が起点だと思います。

著者の方が問題設定をして、それを解決するデータを分析するツールとしてAIを利用した。ということですね。

そうやって得た事例を交えながら、どのような共通点があったかを教えてくれています。

行動や考え方などをわかりやすく分割して書いてくださってるので、実際の行動にも移しやすい内容だと感じました。

その中で、「8つの行動ルール」の「ルール7 先にやめることを決める」で。

5%リーダーは、仕事のスピードを高める上で、業務処理能力を上げることよりも、やめることを決めることが先だと心得ているのです。

第3章 トップ5%リーダーが実践する「8つの行動ルール」 P.129

IT技術の発展により、便利なツールが次々と生まれ、作業効率はどんどん上がっています。

本来は作業効率が上がることで、仕事が楽になるはずですが、逆に忙しく感じることがあるかもしれません。

それは、単純に作業効率が上がったことで、こなせる量が増えただけでしょう。

やってることが変わらないけど、やれる量が増えたから、なんとなくそのまま忙しくしてしまっているという状態です。

これが、業務処理能力が上がるということです。

成果を出し続ける「トップ5%リーダー」は、それよりもやめること、つまり、やらないことを決めて他に目を向けているのです(本書の中では「新しいことにチャレンジ」していると書かれています。)

便利なツールの登場により、業務処理能力が上がるということは、業務の優先順位が下がるとも言えます。

今までかけていた時間を、その業務に当てなくて良くなるからです。(一応補足で、重要度が下がるわけではありません。)

そのツールだけで完結できる場合もあるでしょうし、扱う人を選ばなくて良くなる場合もあります。

そうやって作り出された時間を、成果に直結する重要なタスクに向けるように自分を「仕向けて」いるのです。

自分を「仕向けて」いると書きましたが、この様な仕組み化による行動の矯正も「トップ5%リーダー」の特徴とのことで。

それが自分だけでなく、チームメンバーなどに対しても「小さい行動の変化」が起きるように仕向け、組織の活性化を図っているようです。

トップ5%社員は「意識変革はできない」と思っており、それは5%リーダーも同じでした。

<中略>

…精神的にもハードルの低い、ちょっとした行動をメンバーにやってもらい、1対1の対話で感想を聞き、フィードバックをすることで小さな意識改革を生み出すことを目指していました。

<中略>

意識を変えて行動を変えるのではなくて、小さな行動変容の後に「意外とよかった」を生み出し、挑戦する楽しみを知ってもらう。これが5%リーダーの行動を変容させるメカニズムだったのです。

第5章 トップ5%リーダーのチームを活性化する7つのアクション P.168~173

何かしらの行動を起こすためのポイントとして、実際に行動を起こしやすい程度までハードルを下げるのは有効な方法です。

ダイエットのために運動するとして、意気込んで毎日10キロ走ると決めても長続きしないものです。

なので、例えば帰宅時に降りてた駅を1駅ずらして少し歩く距離を増やすとか、自分が「できそう」と思うレベルから初めて、少しずつ毎日10キロ入るに近づけて行く方が長続きすると思います。

この取り組みやすいことを実施することで成功体験を積み、さらなる挑戦につなげていくということです。

そのような行動を「トップ5%リーダー」は促し、さらに「意外とよかった」という小さな成功体験を自覚させ、行動を変え意識を変えているということでした。

この自覚させるという、行動したことを認めるということ(本書の中では「承認」と表現されています。)は、行動を続けたりより良くするうえで大きな動機になるのも事実です。

リーダーの共通点について書かれているので、承認する人として描かれていますが、これは個人的な行動にも当てはまるでしょう。

自分で決めた事をやってみて「できた!」と自己肯定感を高め自信を持ち、行動や意識を変えていくことはできます。

・・・と、こうして記事を書いてて思いましたが。

この本自体がそのような仕組みになっていて、成果を出している人たちと同じ様な行動ができた!という満足をえられる構成だなぁと。

扱うのは「人間」で「ツール」は補助

というように、この本ではツールの使い方というよりも、どの様に「トップ5%リーダー」が考え行動しているかについて丁寧に説明されていました。

ところどころにリモートツールの導入など働く環境の変化についても触れられていますが。

「ツール」を器用に扱うことでなく、チームの活性化や利害関係者との関係構築のための手段として「ツール」を扱うことが「トップ5%リーダー」のやることである。

まさに、「やらないことを決める」を便利だと考えられるツールに対しても行っているということがわかります。

AIの登場により、様々な事が置き換わっていくことは確実ですが。

その中で、人間がやるべきこと、人間じゃないとできないことに集中することが大事だと考えています。

消費者としての人間がいる限り、ビジネスのツールとしてAIやIT技術を利用するものの、ビジネスは内部でも外部でも対人間で行うものです。

この本を読んで、「トップ5%リーダー」はこの様な「ツール」の柔軟に取り入れることで、より自分でやらなくても良い事を細かく選択できるようになり。

そうしてできた時間を人間関係の構築や自分自身の成長といった、人間にしかできない事に注力するからこそ、求められているチームとしての成功をし続けられるんだろうなと思います。

なので、ビジネスとしての成果を考えるのであれば、どんなに技術が発達しても「ツール」を有効利用するものでしかなく、リーダーとしての「人間力」を高めることが重要なのは変わらないなと。

歩く速さは遅くなりました

と、少し思ったのと違う内容ではありましたが、少し立ち止まってこの本ができたであろう経緯や、内容を繰り返し読むことで、漠然と抱いていたAIとの向き合い方を考えることはできました。

また、行動に移しやすい言葉で書いてくださっているので、2つほど引用しましたが、実際の行動を変えやすい内容でもありますし、実際自分の行動を見直すきっかけにもなりました。

・・・冒頭に出てくる「歩くのが遅い」は読んだ直後からやってますw

成果を出している人の行動を知りたい方は、読んでみても良いと思います。