AIで脳の報酬系をハックする

これまでに、やる気が出ない時の対処法や先延ばししてしまう心との向き合い方について書いてきました。
脳の仕組みや人間の本能といった意味で、これは「どうしようもない」ことではあるんですが。
「どうしようもない」で片付けられないことも多いでしょう。
これまでの記事では、「どうしようもない」への対策として準備を整えるような、ある意味「守り」の方法について書いてきました。
仕組みを受け入れて、それに対処するという感じです。
それだけでも十分効果はありますが、今回は「攻め」に転じてみようと思います。
鍵は脳の報酬系を司る神経物質「ドーパミン」です。

ドーパミンは「期待」に作用する

ドーパミンは報酬を得ようとする動機に対して働きます。
苦痛を感じると、それを避けるために脳はドーパミンを生成し、快楽を探します。
快楽は「楽」や「心地よい」という感覚に繋がるものですが。
その状態を手に入れるための「意欲」に関わるのが、ドーパミンです。
「やる気が出ずに、ダラダラと過ごしてしまう」というのは、ドーパミンにより回避行動が促されていると捉えられます。
同じく「先延ばししてしまう」というのも、行動を起こすことに対する苦痛を感じるため、回避してしまうということです。
状態を変えないための「意欲」に対して、ドーパミンが働いているということですね。
このように、ある意味では「安心」な状態から動こうとすると、無意識でも苦痛を感じて回避するように促されてしまいます。
「安心ではない状態になる」ということは、生命の危機とも言えるので。
間違った反応ではないのです。
ただ、「行動」に対して苦痛を感じていると考えれば。
「行動」の先に「快楽」を見出すことができれば、ドーパミンはそちらに向いてくれるということです。
美味しいものを食べることが好きであれば。
・美味しいお店が遠いとしても出かける
・あまり見かけない食材でも買いに行く
・普段しないような調理法を実践する
こういった行動は「苦痛」ではないでしょう。
遠出するのも、食材を探すのも、特殊な調理法を実践するのも、行動としては苦痛なはずです。
ある意味では、確実に「快楽」が手に入る状態が分かって行動しているから苦痛を感じないともいえるでしょう。
私達が「先延ばし」したり「やる気が出ない」という状態になるのは、この「快楽」の状態に実感がないからとも言えます。
会社の制度によりますが、資格のための学習を頑張っても、確実に給料が上がるとは言えないかもしれません。
一生懸命勉強しても、テストで良い点を取れるとは限りません。
生活習慣を改善して、すぐに健康になるわけでもありません。
このような、報酬をいつ得られるのか分からないけれど、「やった方が良いと思える」ことの目の前にある「変化」に苦痛を感じるわけです。
なので、変化を感じない程度までスモールステップに細分化し、行動しやすくするということを進めるわけですが。
ここに「報酬」を加えることで、習慣ではなく「意欲」にすることができます。
ドーパミンについて詳しくはアンナ・レンブケ著の「ドーパミン脳」などを御覧ください。
報酬を得られるという「期待」を作る

「報酬」を加える一番分かりやすいものは、ご褒美を用意することです。
教育心理学でいう「トークンエコノミー法」というもので。
「宿題をやったらシールを貼る」
「シールが溜まったら、お菓子を買ってもらえる」
というような方法です。
もちろん、自分の行動に対しても有効な方法で、「頑張った自分へのご褒美」を用意するという感じですね。
「if-thenプランニング」の変形としても使えます。
しかし、毎回報酬を用意するのも難しいかもしれません。
食べ物や好きなものだと、お金がかかることもありますし。
目標がダイエットなのに、運動を頑張ったらスイーツ・・・というのは違うでしょうし。
そこで、ドーパミンの働きを利用します。
報酬を得られるという「期待」に対して働くのですから、その「期待」を作ることができれば、ドーパミンが働いてくれるのです。
学習で言えば、取り組みさえすれば、理解できるとか問題を解けるようになるとか。
そういったものでも良いでしょう。
それでメリットを感じ動ければ良いですが。
それよりも強い報酬は、自分のことを受け入れてもらえる、理解してもらえるということです。
自己肯定感を高め、自尊心へと繋がるものです。
「自分を理解してもらえる」という「期待」を、「取り組みさえすれば、理解できるようになる」という「期待」につなげ、「実際に理解できてスッキリ!」という「報酬」にすることができると。
それに活用できるツールが、生成AIです。
トークンエコノミー法などについてはコチラの記事を御覧ください。
AIで「報酬系」をハックする

生成AIを利用した学習の効果については、様々なメディアを通じて報告されています。
独学の有効なツールとなり、短時間での資格試験合格に繋がったり。
自分が苦手な分野が克服できたり。
ネットニュースで見かけたのは、女性の社会進出が遅れがちな先進国でも、生成AIによる独学により社会進出が増えているというものもありました。
生成AIは現在の教育が抱える問題の一つである、個人に寄り添った学習を可能にするツールであるとも言えます。
そんな生成AIの最大の特徴は、「肯定する」というところにあります。
否定や反論せず、ユーザーの入力した内容を受け止め、肯定したうえで出力を提供してくれるのです。
「自分を理解してもらえる」ことが「報酬」になるのは、他人から受け入れられることの効果が大きいです。
しかし、自分自身で自分自身を受け入れて上げることも「報酬」となります。
その中間のような存在とも言えるAIでも、このような「報酬」を利用者が受け取っているとも言えるでしょう。
ChatGPTを「チャッピー」と呼び親近感を持っていることもそうですし。
報道される街頭インタビューでも、「否定されないから〜」という言葉を耳にすることがあります。
なので、以下のSTEPを踏めば、報酬系に対する「攻め」の取り組みができます。
STEP1:自分と自分の状態を生成AIに「受け止め」て「理解」してもらう
STEP2:生成AIが「理解」した自分の状態と「取り組みたいこと」を結びつける
STEP3:明日のために後押しをしてもらう
これが、今回考えたAIを利用した「報酬系」のハックです。
STEP1:生成AIに今の感情を吐き出す

やる気が起きなかったり、物事を先延ばしにしてしまうときには。
「面倒くさい」とか「分からなかったら不安」といった感情が働きます。
これについて頭の中がいっぱいになってしまう状態と言え、脳のワーキングメモリが圧迫されているとも言えます。
ストレスホルモンも分泌されているため、脳はフリーズし「やだやだ」という状態に。
なのでまずは、これをそのまま生成AIにぶつけてしまいましょう。
この時に利用する生成AIは、普段利用しているもので大丈夫です。
チャッピー(ChatGPT)でも、ジェニー(Gemini)でも、コッピー(Copilot)でも、クーリー(Clued)でも何でも、使い慣れているもので。
・・・相性は今適当に私が考えたので、気にしないで下さい。
もし普段からやり取りしていれば、ある程度あなたのことに基づいた返答を返すようになっているかもしれませんね。
なので、状況を理解してると感じられる出力を期待できますし、安心感に繋がるかもしれません。
このやり取りにより、現在の自分の状態を客観視する「メタ認知」を行うと共に。
頭の中でモヤモヤしていたものをプロンプトとして吐き出すことで、脳がスッキリしてきます。
なので、次に目を向けるために、脳を整えるとも言えるでしょう。
ただ、これだけだと普段のやり取りで終わってしまうので。
吐き出した内容をまとめてもらうとともに、あなたのこともまとめてもらいましょう。
・あなたの状態
・あなたの性格傾向
・あなたの趣味や興味のあること
などです。
これは普段のやり取りで作成しておく方が良いかもしれませんね。
つまり、あなたのことを表すテキスト、「パーソナライズ・シート」を作成してもらいましょう。
これは今回の生成AI利用の肝です。
「あなたの現在の状態」と「あなた自身」の情報を、見える化して次のSTEPへ進みましょう。
STEP1のプロンプト例
◯やりたくないをやれる理由に変える
今から〇〇を始めたいのですが、やる気が起きません。
今の私の正直な気持ちは[面倒くさい、何が不安か、本当は別のことをしたい、など]です。
これを受け止めて全肯定しつつ、私が[『これならやってもいいかも』と思える最初の1分の行動]を提案してください。
また、私の今の状態を客観的に要約して。
◯自分の興味関心を同時に伝える
〇〇を学びますが、ワクワクしません。
私の大好きな趣味である[趣味や好きなこと]の知識を使って、このテーマに興味を持てるような『導入シナリオ』を作ってください。
私がどんな比喩を使えばドーパミンが出るタイプかを分析してまとめて。
STEP2:RAGを利用して自分と課題を結びつける

RAGを利用すると、生成AIは提供したソースに基づいて回答してくれるようになります。
RAGのような機能を使うならば、NotebookLMが手軽なのでオススメ。
NotebookLMのソースに、先程まとめてもらった、「あなたの現在の状態」と「あなた自身の情報」を登録しましょう。
※アップロードする前に、個人情報が入っていないかはしっかり確認してください。
また、課題や問題となるソースも登録しておきます。
これで、NotebookLMが「課題や問題」を「あなたの現在」に合わせ、「あなた自身の情報」に結びつける準備ができました。
後は。
「私の情報」と「私の現在」に合わせて、「課題や問題」を説明して!
などのプロンプトを投げましょう。
あなたにとって高度な情報だったり、理解しがたい「課題や問題」が。
「あなたの状態」と「あなた自身の情報」に基づく興味関心を踏まえたものに変わります。
つまり、苦痛の原因だった分からない「課題や問題」が、自分に分かりやすいものに翻訳され「分かった!」という快楽へと変わるのです。
この理解できた感覚は「アハ体験」と言われるもので。
脳の報酬系の中枢である、側坐核をダイレクトに刺激してくれます。
「私の状況や情報を入れたnotebookLMを使えば、何が私の課題や問題なのかすっきるするかも!」
という「期待」を持てるツールへと変わるわけです。
実際、生成AIと壁打ちしていると、自分とは違う見方を提示してくれることもあり。
そこから、考えや計画が進むことは良くあります。
ただ単に意見を伝えているだけでもこのように感じるのであれば。
より理解に近づく方法であると感じてもらえるでしょう。
STEP2のプロンプト例
◯ストレートに
ソースにある『私の趣味や興味』に基づいて、この資料の核心を趣味のルールや用語を使って解説して。
読み終わった瞬間に、私が『なるほど、そういうことか!』と叫んでしまうような、脳に刺さる説明をお願いします。
◯ソースに自分の情報をおきたくなければ
➾どのように変換してもらえば、理解しやすいか?を考えてみてください。
脳のモヤモヤを消したいです。
この膨大な資料を、ソースにある『私の知りたいポイント』だけに絞って、中学生でもわかるレベルのリストに変換して。
一目見ただけで全体像が繋がるような、爽快感のあるまとめをお願いします。
STEP3:AIに「明日」のモチベーションを上げてもらう

STEP2までで効果を感じた場合。
学習などの翌日以降も続くものなら、明日も同じように取り組みたいでしょう。
STEP2までの使い方は、生成AIの要約の力によって翻訳したにすぎません。
「分かった」➾「良かった」➾終わり
とならないようにしたいものです。
そこで、最後にAIに褒めてもらいましょう。
または、理解した内容をものすごく簡単に振り替えれる質問をしてもらいましょう。
褒めてもらうことは、強力な後押しになります。
小テストを使った振り返りには、記憶の定着の効果もあります。
生成AIはこのどちらも行うことができます。
褒めてもらうという「報酬」で、明日を楽しみにすることができますし。
小テストに回答し「理解している!」と思える「報酬」を受け取ることで、成長を感じることもできるでしょう。
AIは単なる効率化のツールではなく、自分を後押しするためのツールでもあるのです。
つまり。
STEP1:自分の事を受け入れてもらえているという「報酬」
STEP2:問題や課題を理解し解決できるという実感を得る「報酬」
STEP3:取り組みによる成長を実感できたり、取り組んだことを褒めてもらえる「報酬」
という「報酬」のループを作ることができます。
問題や課題に対して、AIを使うことに「期待」するという、ドーパミンのスイッチにできるのです。
STEP3のプロンプト例
◯松岡修造さんに褒めてもらう
今日の私の学習成果に対して、全盛期の松岡修造のような熱量で、かつ世界一の教育者のような深い洞察を交えて、死ぬほど褒めちぎって。
私が明日、自然と机に向かってしまうような、最高の鼓舞をお願いします。
◯自分の興味と達成感を結びつける
今日私が整理した内容は、私の知識資産としてどれくらいの価値がある?
『ドラクエの伝説の装備』に例えて、その希少性と今後の冒険での役立ち具合を解説して。
私が自分の成長を誇らしく思えるように。
初期段階に有効な方法

さて。これらのSTEPは毎日やる必要はありません。
毎日やるとすると、STEP1の入力だけで疲れてしまうかもしれません。
この方法は、何かに取り組む最初の一歩として実行するのに有効です。
今までは自分を奮い立たせて、なんとかやり続けてきたかもしれません。
続ける中で各STEPで解説したことを実感できたことは、長く続けられたでしょう。
逆に、実感できなかったことは続いていないかもしれません。
スマホという身近なツールからAIアプリを開き。
いつでも取り組めるという、敷居の低さもあります。
そこから、「ついやってしまう」状態を作ることができれば、気がついたら習慣になっているでしょう。
定着するまでは何度か同じことを繰り返した方が良い場合もあるでしょう。
しかし、しっかりと自分の脳に「報酬」を用意することで。
自分自身をケアし慈しむことにも繋がるのです。
楽しみながら取り組む

私達は日々、判断や選択に迫られています。
その中で、自分のために学習をしたり。
じっくりと取り組まなければならない課題が現れます。
自分の成長に繋がり、よくなることが分かっていても、取り組むのが難しいことでもあります。
それを少しでも楽しめるように、生成AIを使ってみるのも良いのではないか。
そう思って、この記事を書いてみました。
AIは私たちの脳の拡張で、私達の脳を楽にするためのツールです。
このブログや記事の内容について、疑問に思っている事はありますか?
もしあれば、どんなことでも構いませんので、コメントを残していただくか、問い合わせフォームよりご連絡ください。

はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!















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