感情の科学|心理学検定 A領域(社会・感情・性格)

私達の行動の源泉は「感情」です。

常日頃から少しのことで感情が動き、考えたり行動したりします。

また、感情によって生きづらさを感じてしまう人もいます。

感情心理学は、基本的な心の生起メカニズムを知り、契機・統制を考える学問です。

今回も心理学検定の内容に沿って、感情について学んで行きます。

感情の科学インフォグラフィック

感情の理論の変遷

感情についての理論から見ていきます。

私達人間の行動は感情を元に決定しています。

感情がどのように作られ、感情を体験し、他者との関係を作るのか。

まず、「感情の抹消起源説」と呼ばれる、「ジェームズ=ランゲ説」があります。

刺激によって起きる身体反応が、感情を引き起こすという考えで。

「怖いから震える」のではなく、「震えるから怖い」というように感情の発生を捉えます。

それに対し、「キャノン=バード説」では、自律神経系を通して身体反応が起きる前に感情は発生しているとしています。

身体反応と感情が同時に起きていると捉えます。

2つの理論とも納得ができるものではあります。

ある悲しい出来事に対して、知らないうちに泣いていて。

泣いていることが分かったら、「あぁ、私は悲しかったんだな」と感情に気付くことはあるでしょうし。

失敗の怖さによる恐れの感情で、胃が痛くなるというような同時に体感することもあるでしょう。

このような認知に関わる理論が、「シャクター=シンガー説」とも呼ばれる「感情の2要因理論」です。

生理的覚醒とその状態に対する認知的解釈によって、感情と身体反応は変わるとしています。

ジェームズ=ランゲ説とキャノン=バード説を結びつけるような理論で。

テキストの例がわかりやすいので、使わせてもらいますがー。

ドアを空けた時に誰かが立っていたら「驚き」という感情が出るでしょう。

これは、キャノン=バード説による感情の出現と言えます。

その立っている人物が、久しぶりに顔を見れた友人なら、「驚き」という感情は「喜び」に。

ナイフを持っている人物なら、「驚き」という感情は「恐怖」に変わります。

「ジェームズ=ランゲ説」のように、刺激に対する反応として感情が現れるとします。

なので、感情は認知によって発生する理論であるとも考えられます。

このような認知が感情の起こりに重要な役割を果たすと考えたのが、「感情の認知説」です。

認知行動療法などで利用される、出来事の捉え方を変えるというのはこの説を元にしているのでしょう。

現在ではどの説を指示するかというよりも、それぞれの理論が影響しあい感情を起こしていると考えられています。

感情の機能

理論からも分かる通り、感情は何らかの身体反応と関係し、行動を促します。

これが感情の機能の一つである「対処」です。

脳科学や自律神経の本などで取り上げられる内容ですが、「恐怖」を感じると身体は「逃走」・「闘争」・「フリーズ」のどれかを反応として示します。

起こっている状況に対し、身を守るために効果的な方法を選択し、その状況に対処するわけです。

身を守るために逃げる選択をすれば「逃走」。

その障害を取り除いた方が生存確率が上がるのであれば「闘争」。

その状況を過ぎ去る方が良いと反応すれば「フリーズ」。

という感じですね。

起きている状況に対処する行動を選択するための源泉としての機能が、感情にはあります。

もう一つの機能が「社会的交互作用」です。

私達が誰かと信頼関係を築きたいと思う時にコミュニケーションを取りたいと思います。

その時のやり取りは、相手はもちろん、話題に対する感情を元にしたやり取りです。

ざっくりと「私は好き」「好きなんだ、私は嫌い」のような感じです。

このような感情を元にしたやり取りにより、お互いのことをよく知る切っ掛けとなり。

人間関係をより親密にする機能です。

感情は、人間が自然界で生き抜くために備えた機能とも言えます。

感情の生理過程

感情から起こる生理反応は、自律神経系の活動によります。

脳の大脳皮質や扁桃体、視床下部と神経伝達物質をやりとりし生理反応を生み出しますが。

記憶を司る海馬と繋がる扁桃体は、記憶を元に刺激からの感情を生み出すとされています。

感情に関係する主な神経伝達物質には、GABAやセロトニン、ドーパミンなどがあり。

感情の抑制や制御を行う薬に使用されています。

また、部分だけでなく、脳全体でも感情に関する働きが確認されていて。

右半球はネガティブ感情に、左半球はポジティブ感情に関係しているとされています。

脳の働きについては日々研究が進んでいますので。

感情についても、どのような働きが明らかになるのか。

とても興味深い内容です。

感情の発達

感情は発達によって獲得していきます。

快と不快の感情は乳幼児期から見られます。

そこから、養育者とのやり取りによって、様々な感情を獲得していきます。

大人が笑いかけるとそれに反応して笑う「社会的微笑」や。

母親の表情や声を参照する「社会的参照」により、表情の理解。

このような経験を通じて、同じ感情を共有し。

幼児期には大人とほぼ同じ感情を獲得します。

児童期以降には、恥や罪悪感、誇りといった感情も獲得していきますが。

他者との関係において、表現するタイミングや程度という「表示規則」を学んでいきます。

また、年齢を重ね様々な感情を体験することで、質的にも複雑な感情を経験すると共に。

ポジティブ感情とネガティブ感情の重要感も変わるそうです。

感情といっても、人それぞれの特徴を持つのは、発達とその経験による影響と考えられますね。

文化による違い

世界には多種多様な人種があり、文化があり。

個人的には、感情の表現方法の違いが印象を形作っていると思います。

日本人は感情を抑えがちなので、控えめで大人しい印象を。

アメリカ人は感情表現が豊かなので、激しい印象など。

同じ人間でありながら、文化の違いによって受け入れるものと受け入れられないものがあります。

日本人が感情を抑えるのは、周囲との協調を重視する「集団主義」によるもので。

波風を立てる強い感情表現には違和感を覚えますし、冷めた反応をしてしまいがちかもしれませんね。

他方、アメリカは「個性主義」に基づくので、自分の感情を素直に表現するのがアメリカ人という印象です。

言語も関係してそうですけども。

もちろん、個人個人で程度の差はあるので、あくまで全体の特徴として捉えると、という感じです。

自尊感情・恥・当惑・罪悪感という自己意識感情に文化差は現れるようですが。

基本感情はほぼ共通しているとのことです。

感情の表現方法や、その受け入れ方が文化による違いであって。

そのルールを発達と共に学習していくのですね。

感情と認知

物事の捉え方は、その時の気分で変わるものです。

なので、その時の気分によって感情も変わり、決定や行動も変わります。

バウアーが提示した「気分一致効果」がこれにあたり。

現在の気分と逸した記憶を想起しやすい、というものです。

「感情ネットワークモデル」という、特定の感情が概念やエピソードと結びついていて。

その時の気分や感情によって、記憶に影響が及ぶ現象とされています。

また、記憶によらず判断時の自分の気分を判断基盤としている「感情情報説」もあります。

このように、認知した時の気分によって、物事の捉え方や覚え方、どのように判断するかを決めているのです。

物事を冷静に捉えるということに、訓練が必要だというのがなんとなく分かります。

感情の障害

脳の機能や発達過程、文化のルールなどによって感情の調整を行っているのが私達です。

しかし、何らかの原因や要因によりうまく機能しない場合、問題を抱える場合があり。

これがいわゆるメンタルヘルス不調です。

WHOのICD-11の分類だと「気分症群」と「不安または恐怖関連症群」があげられています。

◯気分症群
・双極症
・抑うつ症群
◯不安または恐怖関連症群
・全般不安症
・パニック症
・広場不安症
・限局性恐怖症
・社交不安症
・分離不安症

といった症状があります。

他にも、「強迫症」や「ストレス関連症」など。

広範囲に及ぶのが感情の障害です。

このような障害につながりやすい感情反応を分類したのが、エクマンです。

①過剰に反応する
不安な出来事に不安を感じるのは適応的だが、恐怖まで感じるのは適応的ではない。

②感情を間違った表現方法で表現する
感情と反対の表現をしたり、感情表出を極度に抑制すること。

③周囲と同じ感情がわかないか、違う感情が生じる
不幸な出来事に対して、同じ文化を持つ人達は悲しみを表現するのに対し。
悲しみがわかない、もしくは、喜びを感じている。
という状態。

④対人場面で他者の感情を読み取れない
特に顔面表情から相手の感情を読み取ることができない。

私達がコミュニケーションを取りづらいと思ったり、違和感を感じるような行動がこれに当てはまるでしょう。

感情は社会的コミュニケーションを円滑に進める機能があるので。

感情を制御することで、良い関係を維持する助けとなりますが。

制御しすぎたり、不自然な反応をしてしまうと、社会生活に影響が出るだけでなく。

感情の障害として、自分自身が苦しい状態になってしまいます。

なので、感情制御の参考になるのが、グロスの「感情制御のプロセスモデル」です・

・問題焦点対処:不快な感情体験が予想される場所を避ける
・評価焦点対処:認知的再評価を行い、捉え方を変える
・感情焦点対処:不快な感情自体に対処する

なかでも、不快な物事の捉え方を変える「評価焦点対処」は、メンタルヘルス対策にも良いとされています。

感情は動的なプロセス

感情は、

・生理反応
・認知した出来事をどのように評価するか
・社会や文化の影響
・成長過程の影響

といった様々な要因によって起こるものであることが分かりました。

一つの出来事において、内部と外部がどのように関わることで、感情が生まれているのか。

このプロセスを把握することで、理論も理解しやすくなるなと思いました。

一番参考になるのは自分自身だとも思うので。

自分の感情の動きにより敏感になり、理解を深めて行きたいですね。

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著者プロフィール
ぽんぞう@勉強中

はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!