自己と社会性の発達をたどる|心理学検定 A領域(発達・教育)

前回は発達心理学の基本についてまとめました。

基本的な理論は、一人の人間の発達に着目したものとなりましたが。

生物として生きる限り、社会性の発達は重要な要素です。

どのように社会性を身に着けていくのか?

社会性を身に着けて行くに当たり、「自分らしさ」も大切な要素です。

今回も、心理学検定の内容に沿って簡単にまとめていきます。

愛着理論の復習

愛着理論は前回扱いました。

特定の養育者との間に形成される愛情の絆が「愛着」ですが。

愛着が形成されることにより、養育者の存在を自分の安全基地であることを認識できます。

これにより、自分の興味や好奇心に従って探索を行うことができますが。

社会性は外に向かっていくことで養われていきますので。

愛着の形成が重要となります。

自己理解と心の理論

自己理解とは、「自分の姿かたち、性格、能力、行動などが、どのようなものか理解している状態」と定義されます。

姿かたちの認識については。

ギャラップの「ミラーテスト」により、鏡に映っているのが自分であると認識し始めるのは2歳前後とされました。

自分自身を理解するには、他人と違うということを認識する必要があります。

幼少期にはそのような区切りをつけることができず、感情伝染が起こります。

自分と他人を区別し、感情も別のものであると認識できるようになると、感情伝染はなくなります。

また、この時期には「なんでも自分でできる」と言い張る時期があり「誇張された自己感」を示します。

この時に実際に行ったことの成功や失敗の体験が、自己理解を深めるものとされています。

私達が育てるものとして重要なものとされているのが、「自尊心」を形成することです。

「自尊心」は、自分が何かを行うと成果が得られるという「自己効力感」の感覚を高めることで育ちます。

この感覚の発達は幼少期から始まりますが、心の問題や対人関係の問題として上げられることもある通り、一生関わるものでもあります。

一生に関わるもので言うと、青年期に発達する自己同一性(アイデンティティ)の形成もありますね。

私達人間は、自分自身が何者であるか。

一生をかけて探し続けるために、社会性を発達させているようにも思えます。

自己理解と共に、私たちは他者を理解することで行動を変えていきます。

プレマックとウッドラフは、他の仲間の心の状態を推測するかのような行動を取る「心の理論」の存在を仮説化しました。

これは、餌があるのにもかかわらず、仲間が来た時に餌がないように振る舞うという「あざむき行動」の観察によって提唱されましたが。

要するに、「餌があると思ってきたのであろう」ということを理解し、それに応じた行動を取るということですね。

人間の子供に対して行った、ヴィマーとパーナーの「誤った信念課題」実験によると、4歳頃からこのような行動を取れるということです。

私達は幼児期から、他者の目的や意識、意図、信念、推測を行いそれに従った行動を取り続けていることは、少し思い返すとあると思います。

「気が利く」と言われるときは、相手のことを良く理解したうえで、必要としているであろうことを先読みして実行するときですし。

このように、自分自身のことを理解するとともに、自分と相手の違いを把握し、相手のことを理解するように発達をしていくんですね。

社会性の発達

社会性には広義と狭義の定義があります。

・広義:社会的行動の発達の程度で、社会の中で安全かつ適応的に生きるためのあらゆる能力や特性。
・狭義:対人関係能力。対人関係と社会性は同義。

広義では、他者との接触を通じ、社会の期待と一致した行動により集団との同調を学習していく過程を「社会化」と呼びます。

狭義では、子供の社会性の発達は、親や兄弟、教師や近所の人といった「エージェント」の存在により促されるとしています。

どちらの定義でも、他者との関わりによって社会性を発達させていきますが、視点が違うという感じです。

友人との関係や遊びにより社会性を発達させていき、自己理解やアイデンティティを確立させていき。

「向社会性」を得ていきます。

「向社会性」とは道徳性のことで、内在化された社会規範と価値の体系であり。

コールバーグは道徳性発達の段階として、3水準6段階のモデルを提唱しました。

・前習慣的水準
➾道徳的価値は、外的、物理的な結果にあるものとする。
ステージ1:罪と服従への志向
ステージ2:道具的功利的相対的志向

・慣習的水準
➾道徳的価値は、以下の2点にあるとする。
 ・よい、あるいは、正しい役割を遂行すること
 ・慣習的な秩序や他者からの期待を維持すること
ステージ3:対人的一致・よい子への志向
ステージ4:社会秩序への志向

・慣習以降の水準
➾現実社会や規範を超え、妥当性と普遍性を持つ原則に志向し、自己の原則を維持することに道徳的価値観を置く。
ステージ5:社会契約的遵法的志向
ステージ6:普遍的論理的原則への志向

難しく感じますが、他者や周囲からの評価であることを知り。

その評価の中で良いとされるものを、自分が正しいことを行うことで獲得するとともに維持し。

正しいものを現実社会での規範に基準するとともに、その中にある普遍的な原則を自分の道徳的価値観にしていく。

私達が辿っている内容であるとも言えますね。

そのように獲得した道徳的価値観により、相手の利益となる行動を取れるようになります。

そのような他者の利益のための自発的な行動を「向社会的行動」と言います。

このようにして、集団の中で生きるルールや価値観を身に着けていくのです。

青年期の発達課題

自己理解や社会性の獲得において重要な時期となるのが、青年期です。

青年期は中学生から新社会人の、12~23歳ごろの時期を指します。

第二次性徴による生物学的成熟が起きるとともに、心理的にもアイデンティティを確立し自立性を獲得していく時期でもあります。

特に青年前期にあたる思春期では、身体的変化に伴い大人との関係に変化が起き、社会的な期待が変わってきます。

思春期の特徴である反抗期は、心理的変化として表れます。

親や他者から独立したパーソナリティの確立により、アイデンティティを確立させる「心理的離乳」もこの時期に起こります。

エリクソンはライフサイクル論の中で、アイデンティティの確立を発達課題として上げ。

本当の自分がわからないという同一性の危機を抱えながら、見つけていく過程を「モラトリアム」とし。

その間は社会的な責任や義務が猶予される、先延ばしの期間として唱えました。

マーシャは以下の2つの水準の組み合わせによる、「アイデンティティ(自我同一性)地位モデル」を開発しました。

・危機:自分の生き方について選択、決定する際に可能性について苦悶した時期
・傾倒:コミットメント、自分の信念に基づいて行動していること

自我同一性地位モデルは4つに分類されます。

・同一性達成:価値やコミットメントを形成する探索期間を事前に経験している
・モラトリアム:価値やコミットメントの探索過程にいる
・早期完了:探索することなく、両親や重要な他者のコミットメントを採用している
・同一性拡散:コミットメントを形成できない状態。探索期間も経験しているかどうかわからない。

今後の社会性に関わる自己の確立において、青年期の役割は大きいため、様々な研究が実施されています。

特に、アイデンティティの問題は青年期以降にも話題になることが多いので。

どのように形成されるかを知ることは、この問題に対処する助けになると思いました。

加齢

青年期に急激な変化が起こるとはいえ。

発達は一生起こる変化を指します。

年齢とともに心身の構造や機能の変化を「加齢」といいます。

テキストにもありますが、老化と同じような意味に感じることが多いので、この意味の把握はしておかないとですね。

と、このように老化、つまり、劣化や低下に関わるイメージな側面が多いのは事実なのに代わりはありません。

そのため、ポジティブな側面に目を向ける「サクセスフル・エイジング」の考え方も重要です。

ハヴィガーストが提唱した高齢者の発達課題には。

・健康長寿
・生活の質
・社会的参加

の3つの条件により、最大限の満足感と幸福感に繋がることが言われています。

とはいえ高齢者は、加齢によってだんだんとできることが少なくなっていきます。

その時に自分の弱点を自覚的に補償し、活動範囲を選択的に制限しつつ最良の状態を求める「補償を伴う選択的最適化」による対応も重要であると唱えたのがバルテスです。

加齢は胎児の発達過程にも当てはまりますが。

不要な結合が除去される「シナプス刈り込み」や組織や器官の成長も「細胞死」として捉えるというは衝撃でした。

言われてみればわからなくもないんですがー。

ネガティブすぎるのが加齢だなぁと思います。

とはいえ、ケガなど少しの制限でもストレスを感じるものなので。

それがある時期からずっととなると・・・なかなか難しい問題ですね。

ただ、悲観的になりすぎず。

結晶性知能という、加齢によって研ぎ澄まされるものもありますし。

若い頃からじっくりと過ごしていきたいものです。

・・・あ、私はもう若くはないんですけどね。

色々と考えさせられる

アイデンティティやパーソナリティの部分は、青年期以降常についてまわる問題だと思います。

身体つきがかわり、社会の一員としての行動を求められるようになり。

その中で自分自身を研ぎ澄ますことで、役割を得て、さらに深化させていく過程が「発達」でもあるんだろうなと。

生きている間の悩みも、大体「自分はどうしたいのか」や「自分は何ができるのか」といったものがほとんどだと思います。

発達心理学の章に入ってから、「自分自身はどうだったか?」や「現在の自分はどうか?」といったことを良く考えてしまいます。

進みは遅くなりがちですが、どんなことを学んだかは思い出しやすいような。

これが「エピソード記憶」ですね。

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著者プロフィール
ぽんぞう@勉強中

はじめまして、「ぽんぞう@勉強中」です。
小企業に一人情報部員として働いている40代のおじさんです。IT技術での課題解決を仕事にしていますが、それだけでは解決できない問題にも直面。テクノロジーと心の両面から寄り添えるブログでありたいと、日々運営しています。詳しくはプロフィールページへ!