【読書記録】アサーション入門 自分も相手も大切にする自己表現法(著者:平木典子)|コミュニケーションにおける責任とは

責任とは反応を選ぶことである。

責任の英単語(responsibility)は、反応(response)と能力(ability)でできている。

「7つの習慣」の中で書かれていたことで、心に残っていることです。

反応は作用がなければ起こりません。

作用することで、反応が置き、それを選ぶことで責任を果たせます。

・・・何の話かという感じですが、コミュニケーションは会話などの作用によって反応を起こし。

その受け止め方を選ぶこと。と言えます。

そんなことを感じたのが、今回の本「アサーション入門」です。

様々なコミュニケーション手法がある中で、身につけておきたいと思った内容でした。

アサーションとは

なぜいきなり「責任」の話をしたかというと、本書の以下の内容から思い出したからです。

アサーションでは、自分が表現した後のフォローが必要になるのです。相手の反応に対して、自分はどのようにアサーティブに対応するかということです。

第五章 心に届く伝え方 P.157

本の副題になっている通り、アサーションは自己表現の方法の一つです。

本書によると、アサーションとは「自他尊重の自己表現」であり、互いに自分らしくいられる関係性の構築を目指すコミュニケーション方法です。

やり取りを重ねて相互の理解を深め、より良い関係を築いていくに当たり。

自己表現を自由にする権利があるし、受け取った相手がそれに対しどのように反応してもよく。

その相手の反応に対して、どのように相手を尊重した対応ができるか。

つまり、自分がする表現に対してどのように責任をとるか、という意味合いがあります。

なので冒頭の「責任」という言葉が浮かび、過去に学んだことや自分の経験も含めて、アサーションの効果について理解することができました。

このブログでも、人間関係やコミュニケーションに関する本のレビューをいくつか書いていますが。

ある意味では、それぞれで扱われる内容を「アサーション」という言葉で体系的にしてくれた印象を本書から受けました。

選ぶとは

悩みのほとんどは対人関係が原因であると、よく耳にします。

様々な物事が自動化された分、システムよりも人間へ興味を割く時間が増えたとも言えます。

とはいえ、人間が集まって物事を成し遂げていくというのは、オンラインでもオフラインでも変わらないので。

私達は日々、自分と相手との関係について思い悩み、影響を受けているとも言えます。

「〇〇さんにこう言われた」とか「△△くんがこんなことを言った」とか。

相手を念頭に色々と考え、それによって感情が動かされてしまいます。

しかし、コミュニケーションは双方向のものなので、どちらか一方に責任があるわけではありません。

やり取りや物事の受け止め方によって、コミュニケーションの方向性が決まります。

まずは、言われたことによって起きた感情を受け止め、どのような行動を選ぶか。

これが、自分の表現に対する相手が取った反応への責任のある行動と言えます。

「感情は自分が起こしているのであって、相手のせいで起こっているわけではない」のです。

<中略>

自分が起こしている感情は自分の変化の必要性を示している信号なのです。

<中略>

変化とは、自分を正直に表現し、理解を深め、提案し合い、新たな方向を探ることで訪れるものなのです。

第三章 考え方をアサーティブにする P.92~95

私達は、相手とより良い関係を築きたいと思い、日々思い悩んでいます。

そうすると、相手の感情に振り回される瞬間もあります。

その時に感じた感情は、相手との関係性の変化のタイミングと言えるかもしれません。

自分を正直に表現することが、アサーションにおける自分を尊重することあたりますが。

その自己表現をどうするか?

相手とどのような関係性を築きたいのか?

自分の考え方や価値観を大切にしつつ、相手の価値観や考え方を大切にし、新たな方向性を見出すという態度はより良い人間関係を築くので欠かすことができません。

このように、相手との違いを受け入れつつ、無理なく自分らしくあるための言動を選ぶことが、アサーティブな行動といえます。

起こってしまった感情を大切にしつつ、それをどのように示すことを選ぶのか。

スタートとなるのは、相手への興味や関心を持ち続けることです。

メンテナンスのアサーション

本書では、アサーションを心がけることで身につく3つの力について述べられています。

一つの目標に向かって力をあわせる、言語的で論理的なコミュニケーションを取る「タスクのためのアサーション」と。

社会的動物である人間の生命と関係の維持に関係する、非言語的で情緒的なコミュニケーションを取る「メンテナンスのアサーション」。

この2つのアサーションをつなぎ合わせて、自分の持てる能力すべてを生かし、自分らしくあるための「自己実現のアサーション」。

この3つです。

「自己実現のアサーション」は、マズローの5段階欲求説の最上位に位置する「自己実現の欲求」とリンクしています。

本書の中で明言はされていませんが。

自分の能力や相手の能力を認め、お互いに活かしあい、目標を実現するという意味で、「タスクのためのアサーション」は「承認の欲求」に。

集団に所属し、他者との関わりによる欲求を満たすという意味で、「メンテナンスのアサーション」は「所属と愛の欲求」にそれぞれリンクしていると思います。

日々の関係性があるからこそ、一つの目標に向かって協力することができ、それが自己実現につながる。

という、欲求との関係性だと思います。

で、アサーションが注目される理由が多分ここにあります。

「現代の人々はタスクにエネルギーを使い過ぎ、メンテナンスを軽視している」

<中略>

現代では、その人の存在そのものが受け止められ、大切にされる「所属と愛の欲求」を満たす前に、課題の実行や成果、正しい言動を示すことを要求され⋯

<中略>

「承認の欲求」で対応しています。

第四章 アサーションで身につく三つの力 P.124~125

アサーションの自己尊重は、ありのままの自分が受け止められ、自分らしくあってよいということを理解することで、自分の価値観や軸を元に行う表現です。

それは、「所属と愛の欲求」が満たされることで実現されます。

しかし、引用部分によると、自分のできることや成果により認められる「承認の欲求」が先に満たされやすいのが現代のようです。

ありのままの自分ではなく、自分の能力を受け止められる。

つまり、自分のできることを他人に判断されることが先に来るため、その判断基準という他人の価値観が軸となってしまう。

そして、ほんとうの自分と認められている自分にズレが生じ、悩みを抱えることになってしまうということだと思います。

まずは自分自身に目を向けること。

そうして、自分を大切にして自分の軸を持つことで初めて、相手とのより良い関係を築き自己実現につながる。

そのような関係の築き方を教えてくれるのが、アサーションなんだなと思いました。

このようなことがわかれば、今心がけたいことは「メンテナンスのアサーション」であると言えます。

非論理的、情緒的なコミュニケーションについて本書で代表的なものとしてあげられているのは。

「慰め」「励まし」「労り」「称賛」「感謝」「挨拶」の6つです。

これらは、何気ない日常の会話で起こるものですが、当たり前の事すぎて見向きもされない場合もあります。

ですが、これらをしてくれない人に対しては、「冷たい」とか「嫌な感じ」という印象を持つのも事実です。

また、きっかけに会話が始まるものでもあります。

つまり、相手への興味や関心を示す、相手のありのままを受け止めるコミュニケーションのスタートが、何気ない日常にあるということです。

コミュニケーションの方法と言われると難しく感じるかもしれませんが。

アサーションの基盤となるものは、普段から取り組めるものでした。

ぜひ、実行していきたいものです。

主体的に行動する

本書の中にはワークも含まれているので、普段の自分の言動を踏まえてアサーションについて学ぶことができるようになっています。

その中で言われているのは、自己決断によるコミュニケーションであるということです。

自分の行動による相手の反応を受け止め、責任を持つこと。

これが重要であると。

私は、傾聴を学び実践を考えてから、あまりに受動的な状態にやきもきしていました。

相手の出方を待っているだけでは、日常のコミュニケーションではあまりに無力であると。

なので自分の考えを大事にしつつも、相手の反応を受け止めるという、傾聴に似た考えをするアサーションに興味を持ちました。

参考になることが多くあったので、一つずつ見に付けていきたいと思います。